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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和元年5月号》
年金と周辺知識(利用できる福祉的な制度のあれこれ  パート1)

私たちは、大人になり、健康に大きな支障がなく働いてある程度の収入を得ることができれば、社会保障制度に関する知識を知らなくても、ほとんど毎日の生活に支障が出ることがありません。ところが、突然病気や事故で障害者になり働けなくなったり、年老いて介護サービスを利用しないと一人で生活できない状態になった場合、利用できる社会資源を知っていれば、又は教えてくれる人が周囲にいれば、生活の質を保てたり、費用負担を軽くできる可能性があります。

今月号は、利用できる福祉的な制度についてお話します。すぐに利用することがないとしても、将来役に立つかもしれません。

分野別に説明します。
まず、年金関連で、2つあります。一つは障害者特例というものです。
障害者という名称ですが、障害年金ではありません。老齢厚生年金の特例のようなものです。条件が2つあります。
・障害厚生年金の3級程度の状態にあること
・厚生年金に加入して働いていないこと
上記の2つの条件を満たし、申請して日本年金機構が認めたら、完成された形(定額部分と報酬比例部分)で厚生年金が受け取れるというものです。20年以上厚生年金に加入して一定の配偶者がいれば、配偶者手当も一緒に受け取れます。仮に平均的な給料で30年間働いた62歳の男性が、この障害者特例が認められたとすると、月に15万円位になります。
夫婦2人の最低の生活費でしょうが、働けない場合はありがたい制度です。
手続き先は、年金事務所ですが日本年金機構指定の診断書が必要で、受け取れるのは提出した月の翌月分から65歳までとなります。また、生年月日による制限もあり、男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれの方となります。

二つ目は特別障害給付金といいます。 国民年金制度が始まったのは、昭和36年ですが、当時は現在の強制加入制度と違い、任意加入と言って、国民年金保険料を支払う、支払わないは本人の自由でした。ですから20歳以上でも、会社員の妻や大学生は多くの方が加入していませんでした。また、国は国民年金制度を国民にあまり周知していませんでした。
ですから、昭和36年から強制加入になった昭和61年3月までの間で(学生は平成3年以前)、20歳以降に不幸にも大きな病気や事故に遭遇し、障害が残った場合に障害年金を受け取ることができない人たちがいたのです。学生無年金訴訟という裁判等を経て、その方たちを救う目的で特別障害給付金という制度が始まりました。 1級が月5万円位で、2級が月4万円位で、手続き先は市町村役場です。

次に紹介するのは労働者災害補償保険からの「障害(補償)給付」です。耳慣れない言葉ですが、会社員やパート等の給料をもらって働いている人たちが、仕事上や通勤時のけがや病気が原因で、一定の障害が残った場合に、国が行っている労働者災害補償保険から支給される給付金です。業務災害の場合が「障害補償給付」、通勤災害が「障害給付」といいます。
私の事務所でも現在通勤災害で大けがを負った男性の事務処理を行っています。治療費はほぼ本人負担がなく、休んでいる間の給料に相当する「休業給付」も8割相当は出ますが、失職しそうですし、今後のけがの治り具合もわかりません。妻と小さい子供もいますので、本人の不安はいかばかりかと心配になります。

次号のパート2で健康保険、雇用保険、介護サービスに触れます。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
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