ご本人が障害年金の請求手続きができない、または、何らかの請求困難な理由があれば、費用が掛かるとしても、専門の社会保険労務士に依頼し、早急に受給権につなげたほうが、結果的に本人の利益になるケースが多いのが実情です。
ただ、中には数回自分で年金事務所へ行って相談し、場合によっては、いささか不愉快な気持ちになることもありますが、手続き可能な場合もあります。
傷病名で言うと、人工骨頭・人工関節・切断等の肢体障害・人工弁・ペースメーカー等は、比較的請求手続きの難易度が低いと言えます。
ただ、提出しないといけない重要な書類3点(初診日の証明書である「受診状況等証明書」、おおむねこの書類の内容で受給が決まる「診断書」、本人が記入・作成する「病歴・就労状況等申立書」)は決して手を抜かずにチェック・作成して下さい。
以下、標準的な手順を説明します。
@ 手元に年金手帳(ねんきん定期便)を用意し、最寄りの年金事務所に予約を入れる。(現状1〜2週間先の予約日しか取れないところが多いです)
A 予約日が決まれば、自分で保管している傷病に関する資料(診察券、身障者手帳等、これまでの通院歴を箇条書きにしたメモ作成)を用意する。
B 初診日がいつなのか、不明な場合は、年金事務所職員に相談する。合わせて提出書類一式が入った「障害年金キット」と診断書を受け取る。(初回相談)
※請求者の理解と障害年金審査の上での「初診日」が異なりますので、要注意です。
請求者は、現在かかっている病院の初診日を指すと思っている、または、診断名が確定した日を初診日と思っていることが多いのですが、違います。あくまで、請求しようとしている傷病で初めて病院にかかった日となります。
C 重要書類である「受診状況等証明書」を初めに取得する。次に自分で記入する「病歴・就労状況等申立書」の下書きを開始する。(納付要件を確認するための2回目の相談)
D 診断書作成依頼を主治医に行う。@の前に主治医と障害年金申請の相談をしておく事もあり、Cで用意した書類を参考資料として主治医に提示することもある。
E CDで示した3つの重要書類がそろい、内容に問題がなければ、障害年金請求書と通帳写しを添えて提出する。(3回目の相談)
※場合によっては、戸籍謄本や所得証明書等個別に必要になることもあります。
次にそれぞれの傷病の診断書のポイントを述べます。
人工骨頭・人工関節・人工弁・ペースメーカーは、「初診日」が厚生年金加入者であれば、ほぼ3級と決まっています。「初診日」が国民年金の被保険者であれば、3級という等級がない為、残念ながら該当しません。よほど歩行に困難が生じているという場合は、請求を考えてもいいかもしれません。
請求手続きが可能な時期は、初診日から1年半経過後となっていいます。しかし、「認定日の特例」があります。
人工骨頭・人工関節は、入れた手術日が認定日
人工弁・ペースメーカーも装着した手術日が認定日
手足の切断・離断は認定日が切断・離断日となります。
この特例は"1年半待たなくても、症状が固定していると考えるので受給が早くなる"というものですから、仮に初診日からもうすでに1年半が経っていたら大至急手続きを取ってください。基本的に、年金は提出した月の翌月分からしか受け取れないので、遅れるとそれだけ金額面で不利になります。(2枚の診断書で、障害認定日請求ができることもありますが省略)
診断書を提出する際の注意点をいくつかあげます。
・人工関節は、2個3個と入れたら等級が上がりますか?という質問もありますが、歩行等に大きく支障がなければ上がりません。
・ペースメーカーは心電図を添えます。
・診断書に赤字で日付を記入する箇所が何か所かあります。大事なところですので、記入してあるか必ず見てください。記入されていなければ、返戻と言って戻されます。
・障害認定日請求ではなく、現在の症状で提出する事後重症請求の診断書の有効期間は3か月です。医師が診断書を記載した日から3か月以内ではなく、赤字で書かれた「現症日」から3か月なので、ここも気を付けないといけません。
たくさん書きすぎると、自分でやろうという気が失せるかもしれませんので、このあたりで止めておきます。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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