今月号は思ってもみないことで大金が入ることになった事例をご紹介します。
【これまでの経緯】
現在は86歳のヒサヨさん
農業を営む男性ヒデオさんと結婚し、3人の子供に恵まれました。
ヒデオさんは農業の収入だけでは生活が苦しいため、時々近所の建設会社で働いていました。不幸なことに50代半ばで仕事中に死亡。ヒサヨさんは労災保険から遺族補償年金を受け取り、農業をしながら3人の子供達を育てました。
亡くなった時、ヒサヨさんは51歳でしたが、国民年金保険料の支払いは国民の義務だろうと思い1月も欠かさなかったそうです。
ただ、ヒサヨさん65歳時の平成10年は、現在のように年金請求書が自宅に届くわけではなく、自分で役所か年金事務所へ請求手続きに行かなければ受け取れない時代だったのです。
ヒサヨさんは、近所の方から「遺族年金をもらっているから、自分の分はもらえないよ」と聞いたのかもしれません。年金の手続きに行くことはなかったそうです。
今年に入り、日本年金機構から手続きを勧める文書が届きました。内部で未請求者のリストアップを行い、ヒサヨさんが手続きをしていないことが分かったのでしょう。でも、本人もご家族も文書の意味が分かりません。
ヒサヨさんとご長男とお会いしました。すぐに代理で請求手続きを行い、ヒサヨさんに有利になるよう繰り下げ請求を行うことにしました。
これまで真面目に払ってきたので、老齢基礎年金は満額の年80万円ほど、繰り下げ請求をすると現在と率が違い、なんと年145万円になるのです。権利発生から5年で、時効消滅といって1月分ずつ消えてなくなるのですが、直近5年分は受け取れます。
ヒサヨさんの場合、手続きの関係で66月分の支払いがあり、約800万円受け取れることになりました。
その金額に驚かれたのは、ヒサヨさんではなく一緒に住んでいる長男ご家族でした。
15年分は消えてなくなったのですが、不平の一つも言われず感謝の言葉のみをいただきました。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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