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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和4年8月号》
〜遺族年金不支給報告のその後〜

今年の2月号で、遺族厚生年金の請求が認められず、その不支給理由に憤りを感じながら書いた事案に、嬉しい結果が出ましたのでご報告します。
ブログを書いた後、3月に九州厚生局に対して、不服申立て制度である審査請求を行いました。
当方の主張:妻は、亡くなった夫によって生計維持されていた遺族に該当する為、遺族厚生年金の支給を求めるというものです。
保険者(日本年金機構)の主張:死亡者が、請求人に対して経済的な援助を行っていたことがわかる客観的な追加資料を求めたところ、音信に関するやり取りの資料は提出されたが、経済的な援助を証明する資料の提出はなかった為、生計維持関係は認められず、不支給とした。
争点(問題点)は、請求者(妻)が夫から生計維持されていた配偶者であったかどうかという点になります。

〈機構が出している認定基準通知〉抜粋
●経済的援助:認定日の直近において、経済的援助の実態がある必要があるが、入院していた等の理由により、仕送りが期待できない状態にあることが確認できる場合は、除外する。
●音信・訪問:音信・訪問等の存在とその目的を確認し、通常の夫婦又は親子に存在すべき程度のものであるかを確認する必要がある。
●総合的な判断:一時的に途絶えている場合は、認めないという趣旨ではないことから、でき得る限り多くの判断材料を収集したうえで判断する必要がある。

〈結論〉 闘病により仕送りをしなかったというより、できなかったというのが実情で、仕送り等が期待できない状況にあることが推認できる。
夫と妻双方に婚姻関係を解消する意思はなく、形骸化していないことが資料から見て取れる。病気というやむを得ない事情が解消すれば速やかに夫婦の共同生活が再開されることが予見されることから、起居を共にし、消費生活上の家計を一にすると認められる。そうすると、原処分は妥当ではなく、これを取り消さなければならない。

以上のように、審査請求という不服申し立ての場で、3か月後に不支給という結論は覆りました。夫死亡時にさかのぼり、遺族厚生年金が支給されます。遺族厚生年金を残された配偶者に受給させることは、亡くなった夫の意思でもあり、妻が今後65歳まで月に何万円かの遺族厚生年金を受給できることは、生活の大きな支えになります。
今回の事案で思うのですが、日本年金機構審査部門は、提出された資料に細部まで目を通さず、マニュアル通りの通り一遍の審査しかやっていないのではないかという疑問です。少なくとも、通知等に照らし合わせると、「療養等により仕送りができない状況等は理解できるでしょ!」と思ってしまいます。そこを見逃されると不支給となり、その結論を受け入れざるを得ない案件がこれまでにもあったのではないかと危惧します。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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