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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和7年11月号》
20歳前傷病による障害基礎年金の事例

 これまで障害年金を受け取るには3条件(初診日条件、保険料納付条件、障害状態条件)を満たすことが必要ですと書いていますが、今日は保険料納付条件を満たさなくてもよい『20歳前傷病による障害基礎年金』を紹介します。
 ただ、20歳前に初診日があっても高校を卒業して就職し、厚生年金に加入していた期間に病気やけがで障害状態になった場合は、10代であっても障害厚生年金の申請ができます。  《事例》
 20歳男性
 傷病名:広汎性発達障害、多動性障害、中等度知的障害
 幼児期から視線が合わない、他の子供たちと遊べない、一つのことに集中すると声をかけても返事がない等の行動が見られました。学校を黙って抜け出したり、成績もかなり悪くついていけませんでした。周囲の勧めで子供の発達クリニックを受診し、療育手帳B1取得、IQ50でした。 高校から特別支援学校へ進学、卒業後は、就労継続支援B型作業所へ通所しています。

 一人ひとり障害状態は違いますが、彼の場合は障害基礎年金2級で、以下のような感じです。
 日常生活を送るにはかなり両親や周囲の援助が必要です。
 食事は目の前に置けば食べることができますが、こぼすことも多く、食事だからといって自分で食器を運んだりしません。入浴や着替え、衣服の調節も言葉かけや指示することが必要です。散髪や買い物も誰かが帯同しないと行けません。ゲームは何時間でも熱中してやり続けます。服薬は自身で管理できない為、その都度両親が与えて飲ませます。作業所では簡単なシール貼りや袋詰め等を1日6時間行っています。

【20歳前傷病による障害基礎年金には支給が止められる規定があります】
 @ 海外に住所を移した場合
 A 刑務所等の施設に収容されている場合
 B 所得がある程度ある場合(収入で全額停止は6,452,000円以上、半額停止が5,180,000円以上)

【手続きについて】
 20歳前傷病による障害基礎年金の診断書は、20歳前3か月から20歳後3か月以内の状態を記したものとなります。知的障害の方は、かかりつけ医がいない場合も多いので、早めに自治体等に問い合わせておいた方が無難です。
 また知的障害の方は生来性の障害なので、初診の証明書を省略できますし、ご家族等が作成する「病歴・就労状況等申立書」は生まれたときから20歳まで、一つのマスに書いて差し支えないとなっています。
 発達障害であれば、生まれたときから提出するときまで、3年〜5年ごとに記載します。
 書類がそろったら、提出ですが、審査に3か月ほどかかります。認められたら年金証書が送付されます。2級で1月69,000円です。その他年金生活者支援給付金という福祉的なものも月5,450円受け取れます。
 税金はかかりません。障害状態は良くなったり悪くなったりするので、更新という手続きがあります。2〜3年から5年ごとに自動的に診断書が送られてきます。しかし、知的障害はそう変化がない障害ですから、更新期間は長い方が多いようですし、事例の方は永久認定と言って、診断書提出不要でした。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
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