許認可事業のココロエ

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福岡!企業!元気!のための許認可事業のココロエ 《平成28年9月号》
山陽道トンネル事故のその後について

 今年3月17日午前7時25分ごろ、広島県東広島市の山陽自動車道の八本松トンネルにおいて、中型トラックが渋滞で停車していた車列に追突し、車12台が衝突、うち5台が炎上し、2名が死亡、8名が負傷するという事故が発生しました。
 この事故について本コラムの5月号でも取り上げましたが、その後について取り上げてみようと思います。

【事業者のその後】

 埼玉県川口市のゴーイチマルエキスライン株式会社は、7月に「ツカサ運輸株式会社」と商号を変更して、現在も貨物自動車運送事業を営んでいるようです。
 後述している3月23日の行政処分を受けた時の運送事業法上の営業所所在地は「栃木県さくら市」でしたが、6月24日に今回の事故を端緒に監査をした行政処分を受けた時は、登記上の本店と同じ「埼玉県川口市」になっていましたので、営業所を移転したようです。

【 運転者と運行管理者の逮捕 】

 事故を起こした運転手は「自動車運転処罰法違反(過失運転致死) 」で逮捕されていましたが、当該事業者の統括運行管理者(事業者の役員でもあるようです。代表者と苗字が同じなので親族の可能性があります。 )も事故を起こした運転手が過労と正常な運転ができないおそれがあると認識しながら運転を指示したとして、 「道路交通法違反(過労運転の下命) 」容疑で逮捕されました。
 また、埼玉労働局川口労働基準監督署は、会社と運行管理者を労働基準法違反の疑いでさいたま地検に書類送検しています。

 逮捕された運転者の公判で事故前の約2カ月半の間に3日しか休みがなかったと指摘されているようで、事故前の1か月間の労働時間は、国の基準(320時間)より100時間以上多かったと報道されています。
 おそらくこの労働時間は拘束時間のことを指しているのかと思います。トラック運送事業の運転者の拘束時間は原則293時間で、1年のうち6ヶ月までは、1年間の拘束時間が3,516時間を超えない範囲で1ヶ月の拘束時間を320時間まで延長することができます。
 100時間以上超えているということは仮に420時間とした場合、15時間拘束で28日勤務。14時間拘束だったら30日勤務していることになります。

【 貨物自動車運送事業法の行政処分 】

 この旧ゴーイチマルエキスライン(現 ツカサ運輸)は平成25年12月16日に監査を受けており、11件の違反があったとして、今年の3月23日に70日車の車両停止処分を受けていました。
 (1)乗務時間等告示の遵守違反
 (2)健康状態の把握義務違反
 (3)点呼の実施義務違反等
 (4)乗務等の記録事項義務違反
 (5)運行指示書による作成義務違反
 (6)運転者に対する指導監督違反等
 (7)初任運転者に対する適性診断受診義務違反
 (8)整備管理者の選任(解任)未届出違反
 (9)整備管理者の研修受講義務違反
 (10)運行管理者の講習受講義務違反
 (11)運行管理者の解任未届出違反

 そして今回の事故を端緒に平成28年3月18日監査を実施した結果、15件の違反が認められ、事業の停止(7日間)、輸送施設の使用停止(120日車)の処分を受けています。

 (1)乗務時間等告示の遵守違反
 (2)健康状態の把握義務違反
 (3)点呼の実施義務違反等
 (4)点呼の記録の改ざん・不実記載違反
 (5)乗務等の記録事項義務違反
 (6)運行指示書による作成義務違反
 (7)運転者台帳の作成義務違反
 (8)運転者台帳の記載事項義務違反
 (9)運転者に対する指導監督違反等
 (10)初任運転者に対する適性診断受診義務違反
 (11)運行管理補助者の要件違反
 (12)自動車に関する表示義務違反
 (13)事業計画の変更認可違反
 (14)事業計画事前届出違反
 (15)事業の健全な発達を阻害する競争のうち社会保険等に未加入のもの

 いかがですか?上記のうち最初の行政処分の(1)〜(7)は、今回の事故による監査の行政処分でも同じように指摘されています。改善されていないということです。確かに(8)〜(11)は改善されていますが、日常の安全確保に重要な乗務時間の遵守や健康診断、点呼などは改善されておらず、再度違反しています。このような運行管理では、事故を起こして当然という状況だったようです。
 しかし、最初の行政処分を見ていただいたらわかりますが、平成25年12月16日に監査をしていて、今年3月23日に行政処分を実施しています。関東運輸局は処分件数も多く、他の行政処分を受けている事業者も同程度の期間が経過していましたが、2年以上経過しています。
 これでは監査を受けて指摘された内容を忘れてしまうのではないでしょうか?
 もっと早く行政処分を行い、改善指導をしていれば、今回の事故は防げたのではないかと思えてなりません。

回答者 特定行政書士 久々宮典義
一般貨物運送業 建設業 建設関連業 産廃収集運搬業 宅建業などの各種許認可申請
くぐみや行政書士事務所  特定行政書士 運行管理者(貨物) 久々宮典義
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