許認可事業のココロエ

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福岡!企業!元気!のための許認可事業のココロエ 《平成29年2月号》
軽井沢スキーバス事故から1年

 前回、次回は旅行業法違反事例をとりあげてみたい旨をこのコラムで書きましたが、軽井沢スキーバス事故から1年が過ぎましたので、今回は改めてこの悲惨な事故を振り返り、その後の法令改正や処分の厳格化などを取り上げてみたいと思います。
 旅行業法違反の事例紹介は次回の延期させていただきます。

【事故の概要】
 平成28年1月15日の午前1時55分頃、長野県軽井沢町の国道18号線碓氷バイパスの入山峠付近で、大型観光バスが速度超過のため対向車線にはみ出し、ガードレールをなぎ倒し道路脇に転落しました。乗員乗客41人(乗員2人、乗客39人)のうち、15人(乗員2名、乗客13名)が死亡し、生存者も全員負傷した災害に匹敵するような大事故でした。

【 事故の原因 】
 メディア報道などによると、事故を起こした運転手は大型バスの運転に慣れていなく、大型バス特有の変則ギア「フィンガーシフト」のレバー操作を誤ったことが原因だとのことです。
 このフィンガーシフトは電子制御式で、小型バスや大型バスのシフトに比べるとレバー操作に必要な力が大幅に軽減されるメリットがあるそうです。しかし規定を超える速度で低速ギアに入れようとすると、ニュートラルになるように電子制御されているそうです。
 そのため、峠道の下り坂でエンジンブレーキを利かせようと低速ギアに入れようとして、ニュートラルになり、エンジンブレーキが利かない為にパニックになり、結果としてバスが暴走したとみられています。
 運転者の操作ミスも重大な問題ですが、会社が大型バスの運転に慣れていない運転者に、適切な指導をしないまま乗務させたことも大きな原因です。

【その後の行政・刑事処分 】
 国土交通省は当日の午後には運行会社である「株式会社イーエスピー」に特別監査を実施しました。この特別監査でずさんな運行管理などが発覚し、同社の一般貸切旅客自動車運送事業の取消処分を行いました。
 また、以下のとおり個人も長野県警に書類送検されています。
 ・運転者(事故で死亡)・・・自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑
 ・社長        ・・・業務上過失致死傷容疑
 ・当時の運行管理者  ・・・業務上過失致死傷容疑

【国土交通省の対策】
 この事故を受けて、国土交通省や業界は再発防止対策を進めています。
 国土交通省は事故直後に有識者による委員会を設置し、昨年6月までに85項目の新たな安全対策をまとめました。この85項目のうち、昨年末までに実施したか実施時期が決まったものは71項目だそうです。以下に一部を記載します。

 ・バス協会などの民間団体による巡回指導の実施(人件費などの経費はバス業界が負担)
 ・事業参入時のチェック強化、事業許可の更新制度の導入
 ・新規雇用者への実技訓練の義務付け
 ・許可取消処分を受けた事業者の欠格期間を2年から5年に延長
 ・ドライブレコーダーの設置や記録保存などを義務化
 ・事業停止、許可取消処分などの対象拡大(悪質な違反や社会的影響が大きい重大事故など)
 ・監査担当者を約50人増員

 また、観光庁はバス会社が国の基準を下回る安価な運賃で旅行会社から運行を請け負っていたことから、旅行会社へのチェック態勢を整え、運賃の下限割れに関与した旅行業者に課す業務停止期間の引き上げなども検討されているそうです。

【今後はどうなるか】
 貸切バス事業者には上記のような新たな施策に対応することが求められています。これらの人件費や設備投資などには資金が必要です。特にバス協会による巡回指導の実施はバス会社が資金を負担することになるので、これらもバス会社の経営を圧迫します。貸切バス業界も中小企業が大多数です。対応できずに廃業する事業者も出てくるでしょう。
 国が規制緩和を推進した結果、このようなことが起こり、事故が発生して初めて規制を強化することになったのです。犠牲者やその遺族のことを考えると、それでは遅いという気持ちと若者の犠牲を絶対に無駄にしてはいけないという思いがあります。
 私自身も行政書士として、許可申請をお手伝いさせていただいたりして関与できる事業者には安全対策を強く申し入れるようにしていきたいと思います。

回答者 特定行政書士 久々宮典義
一般貨物運送業 建設業 建設関連業 産廃収集運搬業 宅建業などの各種許認可申請
くぐみや行政書士事務所  特定行政書士 運行管理者(貨物) 久々宮典義
〒815-0032 福岡市南区塩原3 丁目22-11 ラフォーレ大橋104
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