住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)が第193回国会で、6月9日に成立しました。この住宅宿泊事業法はまだ施行されていませんが、早ければ来年1月から施行されるのではと言われています。
今回はこの住宅宿泊事業法のことを取り上げてみたいと思います。
【 背景と必要性 】
ここ数年「Airbnb」に代表される民泊サービス(住宅を活用して宿泊サービスを提供するもの)が世界各国で展開されており、日本においても急速に普及してきました。
旅館業法の政令の改正や特区の活用により、段階的に民泊サービスに近いものが解放されてきましたが、現状では民泊をしているものの大多数が違法状態にありました。
しかし急増する訪日外国人観光客のニーズや実態として大都市圏での宿泊施設の不足もあり、民泊サービスにきちんと法的な規制をかけ、この民泊サービスを活用することが重要であると政府は判断したようです。時代の流れには逆らえなかったということですね。
この民泊サービスの活用には、地域住民等とのトラブル防止に留意したルール作りが必要です。また、無許可で旅館業を営む違法民泊への対応が急務とされてきました。
それでは、創設された住宅宿泊事業とはどのようなものか、概略を見ていきたいと思います。
【 住宅宿泊事業者に係る制度の創設 】
@住宅宿泊事業(民泊サービス)を行おうとする者は、都道府県知事への届出が必要となりました。
(年間提供日数の上限は180日とし、地域の実情を反映する仕組みとして、日数制限を条例で定めることができるとされました。)
A家主居住型の住宅宿泊事業者には、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付、標識の掲示)が義務付けられました。
B家主不在型の住宅宿泊事業者に対しては、上記の措置を住宅宿泊管理業者に委託することが義務付けられました。
C都道府県知事は、住宅宿泊事業者に対する監督を実施することとされました。
※福岡市などの政令市では市が条例を制定し、監督することになります。
【 住宅宿泊管理業者に係る制度の創設 】
@住宅宿泊管理業(家主不在型の住宅宿泊事業者から委託を受けて、前記Aの住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置等を行うもの)を営もうとする者は国土交通大臣の登録が必要となりました。
Aこの住宅宿泊管理業者に対し、住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置(住宅宿泊事業者への契約内容の説明等)の実施と、前記Aの住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置の代行が義務付けられました。
B国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者に係る監督を実施することとされました。
【 住宅宿泊仲介業者に係る制度の創設 】
@住宅宿泊仲介業(住宅宿泊事業者と宿泊者との間の宿泊契約の締結の仲介を行うもの)を営もうとする者は、観光庁長官の登録が必要となりました。
A住宅宿泊仲介業に対し、住宅宿泊仲介業の適正な遂行のための措置(宿泊者への契約内容の説明等)が義務付けられました。
B観光庁長官は、住宅宿泊仲介業者に係る監督を実施することとされました。
【 まとめ 】
簡単にまとめると以下のようになります。
・民泊を営もうとする者 ・・・都道県知事(政令市の場合は市長)へ届出
・民泊の管理業者を営もうとする者・・・国土交通大臣へ登録
・民泊の仲介を営もうとする者 ・・・観光庁長官へ登録
これから政令や省令が定められ、より具体的なことが分かってくると思います。
また、今後は自治体によっては条例で民泊の上限を低減させるものも出てくると思います。
いずれにせよ、民泊を営む方達には、地域住民や他の居住者とトラブルが発生しないよう、適正な運営をしていただきたいところです。
なお、マンション標準管理規約について、この住宅宿泊事業法が成立したことによって、改正の作業に入ったようです。民泊を認める場合、禁止する場合、家主居住型のみ認める場合など、いろいろな案が出ていました。
回答者 特定行政書士 久々宮典義
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