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福岡!企業!元気!のための許認可事業のココロエ 《令和元年5月号》
一般貨物自動車運送事業者の許可取消について

幹線輸送準大手の「関東西部運輸株式会社」が一般貨物自動車運送事業の許可を取り消されることになりました。ヤマト運輸や日本通運、西濃運輸などの大手路線会社の下請業務として関東〜中国・九州間の路線便を担っており、保有車両台数430両、年商110億円超のこれほど大きな運送会社の許可取消は異例です。
今回からはこの取消処分がどのようなものだったのか見ていきたいと思います。

【 取消処分に至るまで 】
本年4月8日に「関東西部運輸株式会社」の一般貨物自動車運送事業の許可を4月22日をもって取り消すと関東運輸局が同社に通知し、発表されました。
1月17日及び23日に同社の本社営業所に対して行った監査の結果、累積違反点数が81点以上となることから「許可の取消処分」に該当することになりました。

関東運輸局の発表資料などを確認したところ、最も古い行政処分は死亡事故を端緒として平成26年6月30日に監査を実施し、2年半後の平成28年12月20日に20日車の車両停止(2点)の行政処分です。この時の処分は20日車(2点)ですので、死亡事故が端緒とはいえ、大きな行政処分は受けていません。

【 その後の行政処分等 】
その後について、報道発表などによると、平成29年5月10日に労働基準監督署より「月に最大246時間の違法な時間外労働」をさせていたとして法人としての同社と代表取締役が書類送検されています。さらにその半年後の11月15日には、「月に183時間の違法な時間外労働」をさせていたとして、2回目の書類送検をされています。

その結果、千葉労働局から「1ヶ月の労働時間が改善基準告示の限度を大幅に超えている」と関東運輸局に通報があり、平成29年11月29日と12月27日に本社営業所が監査を受けています。この監査の結果として、【著しい乗務時間等の遵守違反】があるとして平成30年7月18日に本社営業所が30日間の事業停止、50日車の車両使用停止の処分を受けました。
この行政処分で違反点数35点が付され、累積違反点数は37点になりました。 この事業停止の期間中、他の営業所においても法令違反の疑いがあると関東運輸局に情報が寄せられ、茨城支店、栃木支店、埼玉支店、船橋営業所、神奈川営業所が監査を受け、平成30年12月18日は関東運輸局管内の同社のすべての営業所(本社、茨城、栃木、埼玉、川口、船橋、神奈川)が3日間の事業停止処分を受けました。
結果、関東運輸局管内のすべての営業所の配置車両台数合計400両がストップすることになり、違反点数36点が付され、累積違反点数が73点になりました。
この時点で取消処分になる81点まであと7点しかないことになりました。

【 許可の取消処分へ 】
そしてついに取消処分に至ります。
平成30年7月18日の本社営業所の行政処分の際に改善状況を報告するよう命じられましたが、その改善が認められなかったため、冒頭にも記載したとおり本年1月17日及び23日に本社営業所が監査を受けることになりました。
この本社営業所での監査の結果、乗務時間等の遵守違反の他、法令に違反する事項が確認され、違反点数10点が付されることになりました。
前回の行政処分で累積違反点数が73点でしたので、この10点を付されると83点となり、関東運輸局管内での累積違反点数が81点以上になりました。
取消処分などの不利益処分をする前に行われる「聴聞」も、行われるまで通常数か月以上かかるところが監査後わずか1ヶ月の2月27日に実施されたようです。2回目の聴聞が3月27日に設定されたようですが、81点を超過した事実を覆すことは出来ず、取消処分がほぼ確定しました。
4月8日に取消処分が発表され、すべての営業所(関東内の7営業所に加えて新潟支店)が4月22日をもって許可を取り消されることになりました。

【 取消処分の原因は? 】
この取消処分の原因は著しい乗務時間等の遵守違反です。改善基準告示で定められた乗務時間を大幅に超えて乗務させていた、つまりは違法な長時間労働をさせていたということです。
拘束時間も最大でも1日16時間のところを18時間以上拘束していたことがあったようです。
これらのことでわずか2年の間に2回の書類送検、2回の事業停止を受けたにもかかわらず、長時間労働が改善されていないとして、このままではいつ人身事故を引き起こしてもおかしくないという判断のもと迅速な取消処分へ踏み切ったようです。

今回は行政処分の概要を記載するだけで紙面が尽きてしまいました。次回以降にもう少し掘り下げた内容を記載したいと思います。

回答者 特定行政書士 久々宮典義
一般貨物運送業 建設業 建設関連業 産廃収集運搬業 宅建業などの各種許認可申請
くぐみや行政書士事務所  特定行政書士 運行管理者(貨物) 久々宮典義
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