おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年6月号》
おもしろ知財ツアー42

 弁理士の高松宏行です。新型コロナウイルスの蔓延により、特に飲食業界は深刻な状況下にあります。最近では、国や地方公共団体の支援を受け、店頭での弁当、野菜をはじめとする食材の販売を開始した事業者の方々が多くいらっしゃいます。このように、新たな業務展開を伴うケースでは、商標法上、留意すべき点があります。
 定食屋や居酒屋などの飲食店において、料理や飲物を店内で提供し、お客に対しその場(つまり店内)で消費させる業態は、「飲食物の提供」に該当します。
 飲食店は通常、商標法で規定する第43類の「飲食物の提供」を指定して店名を商標登録します。では、店頭で弁当や食材を販売する行為も「飲食物の提供」に含まれるのかというと、必ずしもそうではありません。
 店頭で販売する弁当や食材は、市場で流通する「商品」として捉えられます。例えば、店頭で販売する弁当がオリジナル商品である場合、その弁当に店名を付す行為は商標法上の使用に該当します。かかる場合、第30類に属する「弁当」を指定して店名を商標登録しなければ、商標法上の保護が図れません。
 ちなみに、第30類に属する「弁当」と第43類に属する「飲食物の提供」は、現行法では非類似の扱いとなります。つまり、飲食店が「飲食物の提供」を指定して店名を商標登録している場合でも、第三者が同じ店名を付して弁当を販売する行為に対しては商標権の効力が及びません(不正競争防止法に基づいて弁当の販売を差し止めできる可能性はあります)。最悪のケースでは、第三者が勝手に「弁当」を指定して店名を商標登録してしまう可能性もあります。
 また、他人(他社)のブランドを付した弁当を仕入れて販売する行為は、第35類に属する「弁当の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に該当します。「弁当の小売又は卸売の〜」と「飲食物の提供」は非類似の扱いとなるため、「飲食物の提供」のみを商標登録している方は注意が必要です。

 飲食物の提供のみを行ってきた飲食店が新たにモノの店頭販売を開始する場合、特にデパートやスーパーマーケットに商品(弁当や食材)を卸して販売してもらうような場合は、上述したリスクが発生しますので、くれぐれもご注意ください。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
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