おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年12月号》
おもしろ知財ツアー48

 弁理士の高松宏行です。ここ最近、一般に公開した発明を特許にしたいとの相談を数件受けました。今回は、一般に公開した発明であっても特許にすることが可能となる新規性喪失の例外について説明します。
 新規性喪失の例外とは、出願する前に不特定多数の者に発明を公開しても、その公開行為によって新規性は喪失しなかったものとみなす制度です。新規性とは特許取得の要件であり、特許出願前に発明が公に知られていないことを指します。公開行為には、HPなどに発明品をアップロードする行為のほか、発明品を販売する行為も救済されます。新規性喪失の例外の適用が認められるためには、公開された日から1年以内に特許出願する必要があります。ひと昔前までは6ヵ月だったので、適用の幅が広くなったといえます。

 しかしながらその一方で、この制度に頼りきるのは危険です。
 新規性喪失の例外の適用が認められるためには、特許出願前までに公開した全ての行為を特許庁に申告しなければなりません。具体的には、いつ、どこで、何を、どのように公開したか、公開時の特許を受ける権利を有する者は誰か、を記入した証明書を、公開行為ごとに作成する必要があるので、申告漏れを起こすリスクがあります。特許庁による発明の審査の段階で、申告していない公開行為が見つかった場合、新規性がないとして特許がとれなくなります。
 公開行為の一例として、特許出願の対象となる発明に関する記事がX新聞に掲載された場合が挙げられます。この場合、〇月〇日のX新聞に公開された事実のみならず、取材を受けた日についても原則として申告する必要があります。TVに放送された場合は、TV放送の日のみならず、収録日についても原則として申告する必要があります。
 また、例えば、第三者が公開された発明を見て「これはいい!」と思い、アイデアを盗んで商品を製造・販売したとします。特許庁による審査の段階で、第三者が販売する商品が、新規性喪失の例外の適用を申告した発明を見て製造されたものを証明するのは、事実上困難です。このようなリスクは、公開日から特許出願日までの期間が長くなるほど高くなります。
 とはいえ、特許出願前に社外の第三者に発明を開示しなければならないケースは珍しくありません。このような場合には、開示する前に相手方と秘密保持契約を結び、特許出願前までに他人に発明を開示しないことを誓約してもらうことをお勧めします。
 また、特許出願の日から1年の猶予があるとはいえ、公開日から1日でも早く特許出願されることをお勧めします。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
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