おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年5月号》
おもしろ知財ツアー53

弁理士の高松宏行です。今回は漫画のネタバレサイトと著作権についてご説明します。
定期刊行物に連載される漫画のネタバレサイトを巡る裁判において、東京地方裁判所がほぼ全てのセリフを無断掲載した行為を著作権の侵害にあたると判断したというニュースが流れました。
漫画は主に画(絵)とセリフ(文字)で構成されていますが、画自体を無断で掲載する行為が著作権侵害に該当するという事実は世間一般に広く認識されています。今回、セリフに対して著作権侵害と判断したことは画期的な出来事と思います。
著作権侵害には様々な種類があり、今回のケースでは「複製権(≒無断コピー)」、「公衆送信権(≒無断アップロード)」の侵害に該当すると判断されました。
ネタバレサイトの運営業者は、閲覧数に応じた広告収入を得ていることが多いと思いますが、著作権侵害においては金銭的な利益を得ているか否かは関係ありません。
SNSに違法なネタバレサイトのURLを掲載して拡散する行為は避けた方がよいです。

今回の裁判は、ほぼすべてのセリフを無断掲載したことが1つのポイントになっています。その一方で、短いセリフについては著作権侵害を否定される可能性があります。著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものである」と定義されており、短いセリフはこの定義に馴染まない側面があります。これは、書籍の題号(例:鬼滅の刃)や登場人物(例:竈門炭治郎)にもいえ、個人がSNSで「鬼滅の刃おもしろい」、「竈門炭治郎かっこいい」といった感想文を掲載しても、著作権侵害には該当しないと考えられています。

この点について、知財業界で注目されている裁判が現在、行われております。有名なゲームである「ドラゴンクエスト」の小説を題材とした映画が製作されているようですが、小説家の話では、小説に登場する主人公の名前「リュカ」を映画製作会社が無断で使用しているとの事です。小説家は映画製作会社に対して、「リュカ」の無断使用が著作権侵害に該当するとして訴訟を提起しております。
映画制作会社の言い分としては、「リュカ」は非常に短く、ありふれた名称にあたるので著作物に該当しないとの事です。
個人的な見解ですが、「リュカ」という名前が別のゲームや漫画等で一定数使用されている事実を発見できなければ、「ありふれた名称」に該当するとの指摘はやや妥当性に欠けると思います。その一方で、「リュカ」はきわめて少ない文字数より構成されるので、これに著作物を認めるのは妥当でないとする映画製作者の言い分も理解できるところがあります。
この裁判の判決がなされ次第、情報を更新したいと思います。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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