おもしろ知財ツアー

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年9月号》
おもしろ知財ツアー57

 弁理士の高松宏行です。今回は商標登録が認められない商標の例について説明します。新商品や新サービスの名称を考える場合の参考にされてください。
 簡単におさらいすると、商標は「名称」と「商品名又は役務名」の組み合わせです。「図柄(+名称)」と「商品名又は役務名」の組み合わせでも構いません。例えば、赤城乳業株式会社は「ガリガリ君」という名称と「菓子(アイスキャンデー)」という商品名を組み合わせた登録商標を保有しています。
 本題に入りますが、例えばA社がりんごの販売を計画しているとします。A社は会議の結果、りんごの商品名を「アップル」と命名し、これを商標登録出願しました。この場合、商標登録はできるでしょうか?答えは「No」です。
 感覚的に商標登録できないと思われた方が多数と思いますが、根拠となる条文が商標法に規定されています。
 商標法第3条第1項第1号には、商標登録を受けることができない商標として、「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と記されています。上述の例に当てはめると、「アップル」は「りんご」の英訳であって、きわめて一般的であり、りんごという商品を普通にあらわす名称にすぎないため、商標登録が認められないことになります。仮に「りんご」を指定して商標「アップル」が登録された場合、商標権者以外の者は「アップル」という名称でリンゴを無断販売することが法律上できなくなり、市場が大混乱します。商標法第3条第1項第3号は、このような事態を防止することを目的として設けられました。
 では、商品「スマートフォン」に対して商品名「アップル」は、商標法第3条第1第1号に該当するのでしょうか。答えは「No(該当しない)」です。商標法第3条第1第1号では、「その商品又は役務の普通名称を・・・」と規定しております。アップルは果物であるりんごの英訳(普通名称)ですが、スマートフォンに対してはそうではありません。
 因みに、アップル社は日本で「スマートフォン」を指定商品とする「iPhone」の商標権を保有していません。アップル社が日本でiPhoneを販売する以前から、某日本企業が同じ分野で類似商標を登録していたからです。この点については別の機会にお話ししたいと思います。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
                     前へ<<               >>次へ
おもしろ知財ツアーリストに戻る