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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年2月号》
おもしろ知財ツアー62

弁理士の高松宏行です。今回は福岡県の企業が保有する食品特許をご紹介します。
冷凍たこ焼きで有名な株式会社八ちゃん堂が製造・販売する「むかん(登録商標)」という商品をご存知でしょうか。「むかん」は、皮をむいた状態で冷凍したミカンの商品名として知られています。
この冷凍したミカンを製造する方法や冷凍ミカン自体が特許になっています(特許第5048049号)。

特許請求の範囲(特許になっている具体的な部分)は次のように記載されております。
「ミカンの内皮に小孔を形成する工程と、
小孔が設けられた内皮に包まれた粒を有するミカンを冷凍する工程とを備える冷凍ミカンの製造方法(請求項1)。」

「ミカンの外皮に内皮を貫通する小孔が形成された後に冷凍された冷凍ミカン(請求項5)。」

特許公報に掲載された図面(図2)は次のとおりです。


特許公報に掲載された図面







特許請求の範囲と図2の記載からも判るとおり、ミカンの内皮に小孔(小さな穴)を形成し、その内皮に粒(食用となる果肉)を包まれた状態のミカンを冷凍する工程を含む製法や、ミカンの外皮に内皮を貫通する小孔が形成された後に冷凍された冷凍ミカン、等々に対して特許が認められています
。 株式会社八ちゃん堂は、独占排他的にこの製造方法や冷凍ミカンを実施することができます。
非常にシンプルな内容ではありますが、審査の結果、新規性と進歩性が認められて特許が認められております。
この発明によれば、ミカンの外皮に内皮を貫通する小孔が形成された後に冷凍されたことによって、冷凍時の体積膨張で内皮が破損することを抑制できる。という効果が得られるようです。
ところで、特許権者ではないAさんが自宅で上記の冷凍ミカンをつくり、Aさん自身が食べても、特許侵害は成立しません。
特許侵害が成立するのは、業として冷凍ミカンを製造し、あるいは販売する場合です(他のケースもありますが複雑になるので省略します)。「業として」は「商売目的として」とほぼ同じ意味です。
今回ご紹介した特許のように、構造が複雑なものでなくても、新規性(世の中に同じものがないこと)と進歩性(世の中で知られているものから容易に思い付かないこと)が認められれば、特許が認められます。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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