おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年7月号》
おもしろ知財ツアー67

弁理士の高松宏行です。前回は「ゆっくり茶番劇」の商標登録問題について解説しましたが、「商標に関して弁理士はどのような仕事を行うのか」といった趣旨の質問を幾つか受けました。今回はその点について詳しくご説明します。
ロゴやネームを独占排他的に使用したいと相談者から問い合わせを受けたとき、弁理士は商標登録を勧めます。
まず、弁理士と相談者との間で打ち合わせを行います。打ち合わせの場では、相談者の業務内容、出願対象のロゴやネームは何か、ロゴやネームを何に対して使用したいのか、等々を聞き出します。業務内容を聞くことで、出願に不正の目的があるか否かを間接的ではありますが確認することができます。
次に、弁理士は商標調査を行います。商標調査では、登録が認められるための基礎的な要件を満たしているか、既に同一又は類似する商標が登録されていないか、登録はされていないけれども第三者の使用によって周知性を獲得しているか、その他取得できない理由があるか、等を調べます。
次に、弁理士は商標調査報告を相談者に提出し、出願するか否かの判断を仰ぎます。相談者が出願指示を行ったならば、弁理士は願書を作成し、特許庁に提出します。
以上が出願に至るまでの一連の流れですが、近年はインターネットやAIの普及によって一部の業務を機械的に行うケースもあります。
例えば、打ち合わせはメールや電話のみで行うケースがあります。このケースでは、相談者の顔が見えないため、相談者が本当にその商標を使用しているのか、本人確認を通して慎重になる必要があります。メールや電話のみですと、業務内容の確認が不足してトラブルになる可能性があります(ブローカー目的かもしれない)。
次に調査ですが、同一又は類似する商標が登録されていないかの調査については、ある程度の経験を有する弁理士であればそこまで難しくありません。その一方で、その商標は登録されていないけれども、第三者の使用によって周知性を獲得しているか否かの判断は非常に難しいです。「ゆっくり茶番劇」のケースも同様で、検索エンジンのヒット件数だけで周知性を推し量ることはできません。インターネット上のあるとあらゆる情報を調べ上げ、未登録周知商標が存在するかもしれない、といった程度の案内しかできません。未登録周知商標が存在するため商標登録はできないと断言する弁理士は、まずいないと思います(そうでなかった場合のリスクが大きすぎる)。商標調査をAIで機械的に行う場合、現状では未登録周知商標までは調べきれないと思います。
次に、商標登録の可能性が低いとの調査報告を行った場合でも、相談者がそれでも出願したいと言われれば、弁理士はよほどの事が無い限り、その指示に従わざるを得ないです。「ゆっくり茶番劇」が同様の過程を経て出願されていた場合、代理人弁理士に対する批判はあまりにも酷です。
いずれにせよ、「ゆっくり茶番劇」のようなトラブルを回避するためには、打ち合わせをメールのやりとりだけで完結させない、相談者の身元確認、業務内容の確認、インターネットによる実際の使用状況の確認が重要であることを再認識しました。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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