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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年4月号》
おもしろ知財ツアー88

弁理士の高松宏行です。 中国で全く関係のない第三者が「大谷翔平」を商標登録出願しているというニュースが先日、大々的に報道されました。中国ではいくつかの理由により、第三者による「大谷翔平」の商標登録は認められないと思います(今回は詳しい説明を省略します)。では、日本で第三者が「大谷翔平」を商標登録できるか、解説したいと思います。 この問題は広く捉えて、日本人の氏名(フルネーム)が商標登録できるか、という問いに置き換えることができます。日本人の氏名はこれまで、同姓同名が全く存在しない場合、商標登録が認められていました。その一方で、同姓同名が一人でも存在する場合、その者の許諾を得なければ商標登録は認められませんでした。 著名なメジャーリーガーである大谷翔平選手が、日本で自己の氏名を商標登録出願しても、他に同姓同名の大谷翔平(漢字も一致)が存在する場合、その者の承諾がない限り、商標登録は認められませんでした。その逆も然りで、第三者が「大谷翔平」を商標登録出願しても、現存する全ての「大谷翔平」本人の承諾がない限り、商標登録は認められませんでした。

ところで、令和6年4月1日より、氏名の登録要件が緩和されます。具体的には、@商標登録出願に含まれる氏名に一定の知名度が存在しないこと(有名な人物の氏名でないこと)、A商標登録出願に含まれる氏名と出願人との間に「相当の関連性」があること、B不正の目的がないこと、を満たせば、同姓同名からの承諾は不要となります。「相当の関連性」とは例えば、商標登録出願人が実際にその氏名を商標として使用していること、が挙げられます。 話を戻し、今年の4月1日以降に第三者が「大谷翔平」を商標登録出願したとします。「大谷翔平」は言わずと知れた著名人なので、@の要件を満たしません。また、商標登録出願人が大谷翔平選手と全く関係がなければ、不正の目的が推認されるかもしれません。したがって、第三者は「大谷翔平」を原則として商標登録できないことになります。但し、現存する全ての「大谷翔平」さんから承諾が得られれば、商標登録は認められることになります。現実的な例としては、大谷翔平選手が契約するスポンサーや、ロサンゼルスドジャースの関連企業が「大谷翔平」を商標登録する可能性が将来、あり得るかもしれません。これらの者は、大谷翔平選手と深く関連し、不正の目的はないといえるからです。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
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