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弁理士の高松です。最近、「なみえ焼きそば」に関するニュースが話題となっています。今回はこのニュースについて触れたいと思います。
まず、波江町商工会は「なみえ焼きそば」を地域団体商標として登録し、商標権を保有しています。
地域団体商標とは、事業協同組合や商工会などの特定の団体に限り、「地域名+一般名称」の商標登録を所定条件下、認める制度をいいます。特に団体の構成員の使用によって、「地域名+一般名称」が少なくとも隣接都道府県に及ぶ範囲まで周知性を獲得している必要があり、「なみえ焼きそば」はこの周知性の要件をクリアできたということになります。
今回、問題になっているのは、端的に述べると、「なみえ焼きそば」のライセンス料(登録料・使用料)を徴収するのはいかがなものか、ということのようです。
世間的には、波江町商工会に対して否定的な意見が多いようですが、制度趣旨等を総合的に鑑みると、ライセンス料が一般水準であれば十分に妥当と考えます。
地域団体商標制度の趣旨は、「地域ブランド」を保護し、地域経済の活性化を図ることです。具体的には、地域名と商品名を組み合わせた商標が「全国的に周知」していなくても登録できるように要件を緩和し、地域事業者が安心してブランドを育成・活用できるようにすることで、ブランドの信用を守り、地域産業の競争力強化に貢献するというものです。
例えば地域団体商標制度が存在しないと仮定して、松阪牛事業協同組合などの所定組合が「松阪牛」を商標登録できないとしたら、全く関係のない牛肉を「松阪牛」として販売する悪徳業者が多発することが十分に想定されます。かかる場合、消費者が本物の「松阪牛」と勘違いして品質の悪い牛肉を誤って購入して不測の損害を受けるのみならず、組合員の長年の努力により積み重ねた松阪牛ブランドの信用を失墜させる事態となり、産業全体として大きな損害を被ることになります。
また、商標権者として認められるのは公益性の高い団体のみであり、ライセンス料はその団体の構成員の総意で決定可能です。さらに、地域団体商標出願を行う前から使用している者に対しては「先使用権」が認められ、ライセンス料を支払わずとも使用を継続できるよう制度上のケアもなされており、ライセンス料をある日突然請求されるようなことはないです。もっとも、一定の信用力を獲得した地域団体(商標権)を使用できる以上(商品も高値で取引できる)、妥当なライセンス料は支払われて然るべきです。
先日、某インターネット番組でこのニュースが取り上げられていたのですが、弁理士不在、弁理士でない者が専門家としてスタジオに呼ばれ、ほとんどのコメンテーターが否定的な意見を述べ、そのまま放送が終了したことを残念に思います。
今月は以上です。
回答者 弁理士 高松 宏行
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