おもしろ知財ツアー

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年3月号》
おもしろ知財ツアー111

弁理士の高松宏行です。今回は、SNSやYouTubeでよく見かける「切り抜き動画」について、著作権法の観点からその仕組みを紐解いてみたいと思います。

1.切り抜き動画は原則、「著作権侵害」
きわめて簡単に説明すると、他人の動画を勝手に編集してアップロードする行為は、法律上は著作権侵害に該当する可能性が非常に高いです。
・複製権・翻案権: 元の動画をコピーし、テロップ入れやカットなどの編集を加える行為。
・公衆送信権: 編集した動画をインターネット上にアップロードする行為。
これらは本来、著作権者の許諾が必要です。では、なぜあんなにも多くの切り抜き動画が溢れ、削除されずに残っているのでしょうか。

2.「Content ID」と収益分配の仕組み 実は、YouTubeには「Content ID」という、AIによる高度なコンテンツ識別システムが備わっています。
権利者は自分の動画が切り抜かれた際、あえて動画を削除(ブロック)せず、「広告収益を自分と投稿者で分配する」という選択をすることができます。これにより、権利者は手間をかけずに宣伝と収益を得られ、投稿者も公認で活動できるという「共生関係」が生まれているのです。
すなわち、「広告収益を自分と投稿者で分配する」という選択をしていない者の動画を勝手に編集してアップロードすると、著作権侵害が成立し得ます。

3.「公式ガイドライン」の重要性
その一方で、最近では、多くの有名クリエイターが「切り抜きガイドライン」を公開しています。
・ルール: 「元動画へのリンクを貼る」「特定のプラットフォームのみ可」などの条件。
・契約: 事務局を通じて正式に収益を折半する契約を結ぶ形式。
これらを守っているからこそ、切り抜き動画は「セーフ」として成立しています。逆に言えば、こうしたガイドラインや仕組みがないNHKの国会中継やTV番組などを無断で切り抜くことは、依然として高い法的リスクを伴う行為と言えます。

映像コンテンツは、作り手の「表現」を守るためのルール(著作権)の上に成り立っています。「みんながやっているから」ではなく、どのような権利処理が行われているのかを知ることが、今のご時世において重要になっています。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
                     前へ<<               >>次へ
おもしろ知財ツアーリストに戻る