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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成27年12月号》
改正派遣法について 2

【初めに】
 皆様、こんにちは。行政書士の和田でございます。前回は、改正されたばかりの「労働者派遣法(通称、派遣法)」について、お話させていただきました。今回は、その改正点の課題を挙げていきたいと思います。

【改正された箇所の今後の課題】
 ○個人単位の期間制限:派遣先の同一組織単位(課など)における同一の派遣労働者の受け入れは3年を上限とします。
 →言いかえれば、同じ職場の課で働くことが出来ません。もちろん課を変えれば、継続出来るのですが、中小企業にそんなに多くの課はありませんし、それを期に契約終了ということも出てくるのではないかと思います。
 また、人材を育てるという意味で、仕事を覚え、慣れてうまくいってきたのに、3年経ったら配置転換しなければいけない企業側の負担や人材の適材適所が出来ないジレンマなども問題です。いい人材を育てたい企業にとっては、また一から指導や育成をしなければならないのも負担だと思います。
 労働者側も、今まで長く同じ場所で働けていたのに、別の業務に変えられると、ストレスを感じ「じゃあ、別の会社で同じ業務をしたいから辞めます」という事態も出てくることが予想されます。

 ○正社員になるためのキャリア支援を派遣元が義務付けられ、派遣先にも特定の派遣労働者に対する労働者募集情報の周知が義務付けられる等、キャリアアップに関する事項が法令として定められています。
 →そもそも、中小企業に勤めている派遣社員が正社員になることがあまり多くありません。また、どの業種も、ちょっとした工夫で、派遣社員を無期限に雇うことが出来ることも問題があると思います。
 企業側としては、正社員にすることは経費がかかります。もちろん、中小企業にはそんな余裕はないので、正社員を減らして、派遣社員を出来るだけ長く使いたいのは、ある意味当然の考え方だと言えます。

 ○派遣元と派遣先の両方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための措置が強化されるということです。(派遣社員と元からいる社員との待遇の格差を少なくしましょう!ということ)
 →派遣社員と正社員の待遇の格差を少なくすると、正社員側からの不満も出てくるだろうし、キャリアアップを推進していながら、待遇がさほど大差なければ、このまま派遣社員でいいや、というモチベーションの低下にもつながりかねないという問題があります。

【その他の課題】
 ○やはり企業側としては「若くて覚えもよくて優秀な人材」を集めたいと思っています。一概には言えませんが、若い人の方が、仕事の覚えもよく柔軟な対応ができ経費の面でも扱いやすいので、これまでもあった問題ですが、より年齢が高くなればなるほど仕事が紹介されにくくなる可能性が高くなっていくと思います。

 まとめとしては、正社員の減少や企業の人材育成の負担、派遣社員のモチベーション等の問題があります。施行してみてやっぱりおかしなところや工夫が必要なところは、変えていく、ということが求められていくでしょう。ただ、個人的には労働問題というのは、企業側からの視点をもう少し取り入れていいのかなと思います。企業が、より正社員を雇用しやすい環境(社会保険料・労働保険料や税制面等)を整えたり、直接的な正社員に対する恩恵や企業の人材育成に対するバックアップなど、もっと検討すべき点が多くあるような気がします…。

回答者 行政書士 和田 好史
和田法務事務所
行政書士 和田 好史
福岡市中央区渡辺通り5-15-6縄田ビル1F
TEL092-752-6116 FAX092-752-6116 
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