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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成25年11月号》
副業禁止規定とその実効力
  質 問

【質問者】
 運送業(正社員 20 名)

【質問内容】
 当社は、運送業を営む株式会社です。正社員 20 名のうち、17 名がドライバーです。中小運送事業者にとって、 労働基準法はとても守れる法律ではありません。 しかし、それでも何かあれば法律が基準となるため、数年前からできるだけ法律の基準に近づける努力を継続しております。
 ドライバーの賃金は、基本的に売上に応じて変動します。そのため、ドライバーは休みを取りたがりません。しかし、1 日の労働時間は 8 時間をはるかに超えるため、休日について以前の週 1 日から隔週 2 日に移行し、さらに完全週休 2 日制に移行しました。その結果、ドライバーは以前と比較すると賃金が約 2 割減額となってしまいました。このことを不満に思って退職する者も生じましたが、今回の相談は全く別件です。収入減を補うため、休日に副業を始めたドライバーについてです。
 当社の就業規則は、正社員の副業を一切禁止しています。従って、副業をしたいと申し出た従業員に対し、これを許可しませんでした。そうしたところ、他の従業員が無許可で副業をしていることが発覚しました。
 当社としては、週休 2 日制への移行による賃金減額を補うためならある程度仕方ないと考えてもいます。しかし、就業規則で禁止していますし、既に申し出た数名の従業員に対してはこれを許可しなかった経緯もあります。当社は、どのような対応をしたら良いか悩んでいます。何か良い方法はないでしょうか。

  回 答

 【副業禁止の目的】
 まずは、 何故就業規則で副業を禁止しているか再度お考えいただきたいと思います。
 副業を禁止する理由の基本は、 「本業への悪影響の排除」です。例えば、@過労となって本業で 100%の労務提供ができなくなることを防ぐこと、A同業他社等への情報漏洩を防ぐこと、Bその他会社の秩序を守ること、等が挙げられます。
 ところが、一般的な就業規則は、貴社と同様に副業を一律的にすべて禁止している例が多いようです。即ち、過労となるおそれがなく、情報漏洩も考えにくく、その他会社秩序を乱すこともない場合であっても、 「副業」という括りだけで禁止することとなっているのです。このあたりに、貴社の悩みの原因が存在します。

【裁判例の傾向】
 副業を理由とする解雇等に関する実際の裁判例の傾向について述べておきます。たとえ就業規則で副業等が禁止され、これに違反したら解雇と明示されている場合であっても、本業への影響がない場合は解雇無効とされている例が目立ちます。
 貴社の場合も、実際に副業をしている者の副業の時間帯や内容等によりますが、本業に影響がないのであれば、就業規則違反であっても解雇が認められない可能性もあるということになります。即ち、就業規則の規定に従って一切の副業を禁止することが、逆に労働紛争リスクを負っている可能性が高いといえるのです。

【対応例】
 貴社の場合、 「ある程度仕方ない」というお考えから、副業禁止の目的等に照らし、原点に戻ることをお勧めしたいと考えます。
 即ち、副業等は許可制とし、具体的な業務の内容、時間帯、勤務予定日数等の報告を受け、本業に影響がないようであれば許可するというものです。例えば、休日に限って認めることを前提としても良いでしょう。この場合、ドライバーですから、本業の始業時刻の前 8 時間以内にアルコールを飲む恐れのある飲食店勤務や、情報漏洩及び引き抜き防止対策として同業他社等勤務は禁止すると良いでしょう。
 このような運用ができれば、無許可で副業をする場合は貴社に隠さなければならない事情がある場合が多いと考えられるため、就業規則の規定も本当に生きてくる可能性が高まります。さらに、収入減のため転職を考える従業員を思い留まらせることにつながる可能性も考えられる等、意外とメリットは大きいと考えられます。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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