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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成27年1月号》
割増賃金の基本
  質 問

【質問者】
 製造業(正社員 3 名、パート 5 名)

【質問内容】
 当社は、食料品の製造及び販売業を営む会社です。先日、労働基準監督署の臨検監督があり、是正勧告を受けました。違反事項として、時間外協定を締結し、届け出ることなく時間外労働をさせていること(労働基準法第 32 条) 、時間外労働に対し、割増賃金を支払っていないこと(労働基準法第 37 条)の 2 点の指摘を受けました。
 労働基準監督官には言えずにいましたが、少し疑問があります。以前どこかで、当社は 10 人未満ですから、時間外協定の届出の義務はないと聞いたことがあるのです。
 また、割増賃金を支払っていないと指摘されましたが、1 日 8 時間を超えて働かせることはありません。このあたりを教えて欲しいのです。また、そもそも是正勧告って何でしょうか。

  回 答

 【是正勧告】
 是正勧告とは、労働基準監督官が労働法令に違反する事実を確認したときに、その是正を促す行政指導です。行政指導ですから、形式上は従う義務はありません。しかし、法違反を指摘され、是正せずに放置して許されるわけではありません。労働基準監督官は、行政官であると同時に、労働法例に関する司法警察官です。刑罰法規である労働基準法違反について、逮捕したり検察庁に書類送検する権限を有しています。
 今回指摘を受けた法 32 条違反、 法 37 条違反は、 いずれも 「6 カ月以下の懲役又は 30万円以下の罰金」と刑罰が定められています(法 119 条) 。しかし、是正勧告を受け、すぐに是正措置をとって報告することで、実際に懲役刑や罰金刑となることはありません。実際に刑罰が適用されるのは、是正勧告を無視するなど、悪質な場合や、重大な労災事故が生じた場合等に限られているのが運用実態です。
 以上から、今回の是正勧告に対しては、指定期日までに是正措置をとって、きちんと報告する必要があります。

 【10人未満】
 常用労働者数が 10 人未満の場合は、 就業規則の作成届出義務がありません。 しかし、時間外協定に関しては、たとえ 1 人であっても届出義務があります。貴社の場合、労働基準監督官の指摘の通り、時間外協定の締結及び届出義務があります。現在労働者数は 8 人のようですので、あと 2 人増員すれば就業規則も届出義務が生じます。
 ちなみに、 「常用労働者」とは、正社員、パート等の区分と無関係に、常時雇用している労働者をいいます。例えば、繁忙期の短期間だけ臨時で雇用する場合等は、常用労働者数には含めませんが、パート等であっても継続的に雇用しているケースは常用労働者数に含めます。

 【割増賃金】
 1 日 8 時間を超えて働かせることがない場合でも、法定労働時間を超えることがあります。それは、1 週間で 40 時間を超える場合です。1 日 8 時間を超えないのに割増賃金を支払っていないことを指摘されたのであれば、おそらく週 40 時間を超えることがあるのだと推測します。仮に 1 日 7 時間労働でも、休みが週 1 日だけでしたら、週 6日労働となりますので、7 時間× 6 日= 42 時間です。40 時間を超える 2 時間分は、割増賃金の対象となるのです。
 別の可能性ですが、仮に 1 日 7 時間労働で週休 2 日制でしたら、週 35 時間労働です。休日の 2 日間とも、2 時間ずつ出勤させても、週 39 時間労働です。しかし、毎週 1日(又は 4 週を通じて 4 日)の法定休日に労働させた場合は、休日労働割増賃金の支払いが必要となります。
 また、 もしかしたら、 深夜労働があるのかもしれません。 週 40 時間以下、 かつ 1 日 8時間以下であれば、個々の所定労働時間を超えて残業させても時間外労働割増賃金は発生しません。しかし、その時間帯が 22 時から翌 5 時の深夜の場合は、深夜労働割増賃金の支払が必要となります。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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