そこが知りたい!労働法

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成27年2月号》
労働時間法制の例外
  質 問

【質問者】
 ウエブデザイン業(正社員 20 名)

【質問内容】
 当社は、ホームページやインターネット上のデザインを制作する株式会社です。当社の従業員の多くはオペレーター職とデザイナー職で、労働時間は本人任せのため長時間労働となっている者も存在します。社会背景が長時間労働に対して厳しく、ブラック企業と言われないよう、できるだけ早く帰るよう指導しておりますが、納期の関係等でどうしようもないときもあるのが実態です。以前、裁量労働制の導入を検討しましたが、労使協定の締結ができず、見送った経緯があります。
 ところで、最近「ホワイトカラーエグゼンプション」の話しをよく聞くようになりました。以前からとても期待していましたが、現実的になりつつあることに期待しています。ただ、年収基準が高いようで、制度化されても当社の従業員は対象にならないようです。
 そもそも当社のような事業の場合、労働時間数で給与を決めることに矛盾があります。裁量労働制、ホワイトカラーエグゼンプション等、きちんと理解したいのですが、文章が難解でよくわかりません。簡単に教えていただけないでしょうか。

  回 答

 【労働時間法制の例外】
 週 40 時間、1 日 8 時間のいずれかを超える労働時間に対しては、時間数に応じて割増賃金支払いが義務づけられています。しかし、少し例外があります。但し、仮にいずれかの制度を導入しても、労働時間把握義務から解放されることはありません。
 @変形労働時間制/ 1 カ月、1 年等の期間を平均して週 40 時間以下とすることで、ある特定の日、週について法定時間を超えても法定時間外としない制度。中小企業では比較的広く採用されている。他にフレックス制度があるが、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる必要があるため、一般に中小企業には馴染まない。
 A事業場外みなし労働時間制/事業場外で労働し、 労働時間を算定し難いときに限り、原則として所定労働時間労働したとみなす制度。 ただ、 「労働時間を算定し難いとき」と認められるハードルが高く、一般にこの制度での運用はリスクが高い。
 B裁量労働制/専門業務型、企画業務型があり、いずれも労使協定及び労働基準監督署への届出を必要とする。対象となる職種等が限られ、要件も厳しい。中小企業の導入はハードルが高いが、専門業務型に該当する職種に限り検討の余地はある。
 C管理監督者/経営者と一体的な立場の管理監督者については、 深夜割増賃金を除き、割増賃金支払い義務がない。但し、事業所毎の管理職と異なり、認められる範囲は極めて限定的。相当な権限がない場合は、 「部長」であっても否認される。

 【ホワイトカラーエグゼンプション】
 割増賃金支払い対象から除外される制度ですが、現在検討中で、現時点では法制化されていません。一定の専門職で、しかも年収 1075 万円以上の労働者に限って適用が検討されているようです。年収基準により、特に中小企業での適用はかなり厳しいのですが、いったん法制化されることにより、今後の対象となる職種の拡大や基準年収の引き下げは期待できるかと思います。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
                     前へ<<               >>次へ
>>そこが知りたい!労働法リストに戻る