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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成30年6月号》
抑うつ状態と診断された従業員の解雇
  質 問

【質問者】
 製造業(正社員50 名、パート50 名)

【法定雇用率】
 当社は、製造業を営む株式会社です。正社員は、商品開発職、製造職、営業職、事務職等を担当しています。まだ採用して半年くらいの正社員の対応で非常に困っています。入社当初から、当日連絡で遅刻や欠勤が多く、出勤した日でも気分が悪いとか言って途中で早退してしまう日が少なくありません。早退しない日も、もちろん残業は一切しません。他の従業員が忙しくしていても、定時でピタッと帰ります。事務職を担当しているのですが、コミュニケーション能力にも支障があり、受発注業務等で情報を他の者と共有せず、本人は欠勤や早退のため取引先に迷惑をかけてしまうこともあります。そこで先日、初めて診断書を提出させたところ、「抑うつ状態、就労可能だが残業不可」という内容でした。
 休職をすすめてみたのですが、休職期間中無給になると困るとかで拒否されました。休職しないのならきちんと働くようにと指導したところ、「きちんと働いているのに酷い、パワハラです」とまで言われました。全くきちんと働いていないのに、どのような精神構造をしているのだろうかと思います。周囲の従業員も、最初は気を遣っていたようですが、最早誰も話しかけもしません。それどころか、当然ではありますが、業務上やむを得ず話しをせざるを得ないときも、腫れ物をさわるような感覚でしか接しません。所属長もお手上げで、異動させてくれと言ってきました。他の部署からは、絶対にいらないと言われます。既に複数の従業員から、「なぜクビにしないのか」と言われています。
 何とか退職してほしいと思っているのですが、休職すら拒否するわけですから、退職勧奨をしても応じるわけがありません。解雇しても良いものでしょうか。

  回 答

【労働契約】
 労働契約は、従業員が事業所の指示命令に従って労務に服し、これに対して賃金を支払うことを約する契約です。所定労働日、始業時刻、終業時刻等も、すべて契約内容です。従って、欠勤や遅刻早退等は、いずれも契約違反となります。契約違反であっても、その程度の問題があります。同じ欠勤でも、正当な理由があって事前連絡を経た欠勤と無断欠勤とでは重さが違います。問題の従業員は、当日ではありますが、連絡はしているようですね。ただ、周囲が問題視するほど、回数が多いようですが。欠勤や遅刻早退等の頻度があまりにも著しく、さらに改善が見込めないのであれば、労働契約を継続することに著しい支障があると考えることは可能だと思われます。

【問題の本質】
 今回の問題の本質は、本人の性格的な問題だと考えます。そのような状態で、ぬけぬけと「きちんと働いている」と言えるわけですし、さらに「パワハラです」と責任転換してしまうわけですから。そして、周囲に迷惑を掛けていることについては、何も感じていないのでしょうか。周囲の従業員も腫れ物を扱うような対応となるのは仕方ないと言えるでしょう。結論として、貴社の対応は大きく分けて二つの方向性のいずれかとなります。今の状態が続くことが問題なのですから、この問題を解消するためには、@本人を改善させる、A本人を退職させる、のいずれかしかないわけです。そして、貴社は既にAを選択している状態だと言えます。

【解雇】
 特に長時間労働もパワハラもなさそうですから、本人の「抑うつ状態」は、私傷病です。たまに精神疾患に罹患している人は休職等を経なければ解雇できないと考える方がいらっしゃいますが、そのようなことはありません。現に、今回は就労不能と診断されているわけでもありませんので、貴社において休職事由にも該当していないものと思われます。
 おそらく貴社の就業規則の普通解雇事由として、「心身の傷病等のため業務に堪えられないと認められるとき」のような規定があるのではないでしょうか。この規定に該当することを理由として、解雇するかどうかを決断するということになるかと思います。ただ、なんとなく想像されていると思いますが、本人から解雇無効を訴えられた場合に、解雇が有効と認められるかどうかは別の話となります。従って、仮に訴えられて解雇が無効と判断される可能性があっても、このままではどうしようもないため解雇するという決意のようなものが必要となります。
 実際に解雇すると決心した場合も、いきなり解雇するのではなく、まずは話し合って退職勧奨をするべきです。そのときに一定の条件を示すことで、合意を得られる可能性もあるわけですから。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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