【少ない人数で働く期間の給与】
一つ目のご質問について。非常に良いご対応だと考えます。育児休業中、少人数で対応する従業員の不満を和らげる効果が考えられます。さらには、モチベーションアップにつながる可能性も考えられます。
一点、正社員には手当・パートは時給アップという異なる対応が気になります。「正社員だから、パートだから」という理由で異なる取扱いをすることは、原則として避けていただきたいと考えます。貴社のパートの時給は、言い替えれば基本給だと思われます。これに揃えて正社員の基本給を上げることは、おそらく現実的ではないと思われます。従って、パートにも手当を支給するのが良いと考えます。具体的には、月 160時間勤務の正社員に月 16,000 円の手当を付けるのなら、パートには時給 100 円相当の手当を付けるという感じです。手当を支給する際は、支給条件や支給期間について明確に示しておく必要がありますので、お忘れなくお願いします。
【うまい話しかどうか】
二つ目のご質問。お察しのとおり、そんなうまい話はありません。結論として、月 80時間以下就業させても育児休業給付金は確かに受給できます。受給できますが、満額受給できるとは限らない、ということです。
育児休業給付金は、休業開始時の賃金に対し、当初 6 カ月 67%・その後 50 %が支給されます。育児休業中に月 80 時間以下就業して賃金を得た場合の育児休業給付金は、育児休業給付金(67%又は 50 %)と賃金の合計の値によって、次の二段階の取扱いとなります。
@合計 80%超過(給付 67%=賃金 13%以下、給付 50%=賃金 30%以下)⇒満額支給
A合計 80%超過(給付 67%=賃金 13%超過、給付 50%=賃金 30%超過)
⇒合計 80%を超えた相当額が、育児休業給付金から減額
仮に月 80 時間就業して賃金 50%の場合、給付 67 %と賃金 50 %の合計は 117 %です。80%を 37%超過していますから、育児休業給付金は「67%− 37%= 30%」と減額されるわけです。このとおり、育児休業中に就業した場合、それが月 80 時間を超えたら育児休業給付金は不支給となりますが、月 80 時間以下でも育児休業給付金と賃金を合計して休業開始前の賃金の 80%以下になるようなしくみなのです。
【そもそも「休業」に対する給付】
育児介護休業法による育児休業制度は、「子の養育を行うために休業すること」を認める制度です。休業中に就業することは、そもそも法の趣旨に反します。厚労省のリーフレットには、「一時的・臨時的な就業」として、「月 10 日(超えた場合は月 80時間)以下」については例外的に認め、「恒常的・定期的に就労させる場合は、育児休業をしていることにはなりません」と明示しています。
貴社の場合、一時的・臨時的に育児休業中の従業員に応援を依頼することが、まずは大前提となります。さらに、育児休業給付 67%の期間は月 20 時間(160 時間× 13%)、50 %の期間は 48 時間(160 時間× 30 %)までが、育児休業給付金が減額されない現実的な上限時間になると思われます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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