【カスハラとは(@)】
カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)について、大まかに定義が公表されました。顧客や取引先などによる「社会通念上相当と認められる範囲を超えた言動」によって就業環境が悪化することが、カスハラとされています。この定め方は、セクハラやパワハラと同様で、具体的な言動が特定されるものではありません。令和3 年度厚労省委託事業でまとめられた資料『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』によると、カスハラに該当する可能性が高い例として、次のとおり挙げられています。
【要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの】
@身体的な攻撃(暴行、傷害)、A精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、B威圧的な言動、C土下座の要求、D継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動、E拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)、F差別的な言動、G性的な言動、H従業員個人への攻撃、要求
【要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの】
@商品交換の要求、A金銭補償の要求、B謝罪の要求(土下座を除く)
【顧客・取引先への対応(A)】
悩ましい問題ですね。実際にお客様が何をしたかによって、対応は大きく変わってくると思います。暴行・傷害等であれば、刑法犯ですから警察に通報すべきでしょう。
しかし、スタッフのミスに対して大声で怒鳴りつけた場合で、スタッフが謝らないからさらに怒鳴ったような事案であれば、通常はまずスタッフ又は店長が丁寧にお詫びすべきで、そこで収まればそれだけの話しだと考えられます。問題は、謝ってもなお態度を変えずに怒鳴り続ける場合等にどうするかですが、その都度事案毎に個別判断となりそうです。
事前にできることとして、カスハラ対策指針を公表することが考えられます。指針には「お客様へのお願い」も明示します。飲食店の場合、店内の見やすい場所に掲示することや、各席に指針を書いた紙等を備えることも考えられます。既に多くの企業が指針を公表していますので、参考にされて下さい。
【従業員への対応】
指針の話しの流れから、相談窓口等カスハラ対策指針を定めて周知させることが考えられます。また、就業規則にカスハラに関する規定をおくことも考えられます。
一方で、従業員が自らのミスを棚に上げ、顧客からのご指摘等を「カスハラです!」と主張するこようなことが許されて良いわけがありません。ミス等に対してはきちんと謝罪することや、そもそもミスを指摘いただけること自体が有り難いことである旨をしっかり指導しておく必要があると考えます。
ところで、勝手な解釈でパワハラ被害主張する者が増加傾向にあります。そして「ハラハラ(何でもパワハラだと主張すること自体がパワハラ)」という造語まで生まれています。カスハラについても、近い将来このようになっていく可能性が高いと推測します。従業員に教育すべき初歩の初歩は、ミスや約束を守らないことで「顧客等を怒らせないこと」だと考えます。カスハラを受けかねない原因をできる限りなくすことが一番の対策かもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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