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【「103万円の壁」の変更点】
「103 万円の壁」には、給与所得者にとって二つの意味がありました。一つは、所得税の被扶養者として認められる基準(配偶者が「配偶者控除」を受けられる基準)。
もう一つは、所得税非課税限度額という基準です。103 万円の内訳は、「基礎控除48万円+給与所得控除55 万円」でした。この長年浸透してきた103 万円の壁が、令和7年より改正されることになりました。
原則として基礎控除、給与所得控除とも各10 万円引き上げられます。その結果、「基礎控除48 万円+給与所得控除65 万円= 123 万円」となり、この「123 万円の壁」が新たな配偶者控除の基準となります。
問題は、この「123 万円の壁」が、所得税非課税限度額ではないことです。ややこしいことに、基礎控除について所得に応じて額が変わる大変わかりにくいしくみになります。給与所得200 万3999 円以下の場合は、基本58 万円に37 万円上乗せされて基礎控除95 万円となるのです。その結果、「基礎控除95 万円+給与所得控除65 万円=160 万円」が、給与所得者の所得税非課税限度額となります。「160 万円の壁」ということです。
【106万円の壁】
巷で「106 万円の壁」という認識が広がっていますが、このような壁は存在しないと考えた方が無難です。社会保険が適用される基準ですが、@所定週20 時間労働、A月8.8 万円以上、B非学生、等を満たすことが条件です。「106 万円」ではないのです。
さらに、厚生年金被保険者数50 人以下の事業場は原則として対象外です。貴社の場合、自ら希望して任意適用を受けていない限り、既述の@AB等を満たしても、社会保険は適用されません。
※ 厚生年金被保険者数36 人以上50 人以下の事業所は令和9 年10 月、21 人以上35 人以下の事業所は令和11 年10 月、11 人以上20 人以下の事業所は令和14 年10 月より、上記@AB等を満たすことで強制適用とされる見直し案が示されています。
【130万円の壁】
「130 万円の壁」は、これを超えると社会保険被扶養者として認められなくなるという壁です。注意したい事項は、所得税の年収計算には通勤手当が含まれませんが、社会保険の場合は含まれることです。また、所得税は1 月〜 12 月の収入の「結果」で判定しますが、社会保険は今後1 年間の「見込み」で判定します。
特に注意したいのが通勤手当です。月10 万円、別途通勤手当1 万円の場合、所得税は年間120 万円で「123 万円未満=所得税法上の被扶養者」となりますが、社会保険では年間132 万円で「130 万円以上=社会保険法上の被扶養者として認定されない」となります。同じ給与額なのに、123 万円未満、かつ、130 万円以上となるわけです。
【家族手当】
最後に、パート等の配偶者の、勤務先での家族手当の有無、有の場合は支給条件・支給額が影響してきます。家族手当は法律上の支給義務がないため、支給する場合はその事業所が支給基準を定めることになります。仮に「給与所得103 万円未満の被扶養者配偶者」のような条件であれば、「123 万円の壁」・「130 万円の壁」を超えない場合でも、103 万円以上であれば家族手当の支給対象外となってしまいます。
家族手当が絡むことで、事業所ではかなり正確な情報提供を受けない限り、判断が難しくなります。このような場合は、あくまでもご自身で最終確認・判断をするようにしておくべきだと思います。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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