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【メリット】
賞与を支給せず、その分を毎月の給与上乗せとする場合、単純に年収は同水準です。
年収は同水準なのに、毎月の給与は高くなります。又は、賞与支給額を従来の半分くらいにして、その半分相当額を毎月の給与に上乗せするような方法も考えられます。
この場合も、年収は同水準で、毎月給与は少し高くなります。貴社のメリットとして、次のような事項が考えられます。
@正社員の最低賃金対策に資すること
A求人において、有利になる可能性があること
B正社員の毎月の生活が安定しやすくなること
C正社員だけ賞与支給という同一労働同一賃金違反の可能性がある状態が改善されると考えられること
貴社の場合、特に@Aのメリットが大きいのではないでしょうか。
【デメリット】
賞与の給与化は、賞与縮小又は不支給ということになります。貴社のデメリットして、次のような事項が考えられます。
@賞与額は評価で増減できたところ、毎月給与ではそうはいかないことA短期間で退職してしまう者に対する賃金・社会保険負担額が増えること貴社の場合の程度がわかりませんが、評価結果で増減できない(又はできる範囲が縮小する)という一定のデメリットはあるでしょう。
【事業所によっては】
賞与に対する厚生年金保険料は、賞与1 カ月につき150 万円を超える部分にはかかりません。150 万円でも300 万円でも同額なので、給与化することにより社会保険料負担が増えてしまう可能性もあります。
毎月給与でいえば、厚生年金保険料は65 万円(厳密には63 万5000 円)以上は100万円でも200 万円でも同額です。毎月給与が高い層は、賞与の給与化によって社会保険料が削減できる可能性があります。
※ 法改正により、65 万円は令和9 年9 月より68 万円、令和10 年9 月より71 万円、令和11 年9 月より75 万円に引き上げられる予定です。
【まとめ】
賞与の給与化のメリット・デメリットは、以上のとおりで一概には言えません。しかし、最低賃金対策や求人対策を中心に考えるのであれば、それなりに大きなメリットがあると考えて良いのではないでしょうか。
政府は、全国加重平均最低賃金を2029 年までに1500 円に引き上げることを目指しています。最低賃金と無関係の賞与を最低賃金対象の毎月給与に上乗せすることは、最低賃金から追いかけられる速度を弱める可能性が高いといえます。
また求人においても、求職者は不確実なイメージがある賞与よりも、確実なイメージがある毎月賃金が高い方を望むことが一般的だといえます。貴社の状況から、賞与の全部又は一部を給与化することは、一定のメリットがあると考えられます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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