【役員の任期】
ご存知の方も多いかと思いますが、平成18年5月に会社法が施行されて以降は、株式の譲渡制限に関する規定がある会社の役員の任期は、定款で10年まで伸長できます。
通常は、取締役は選任から2年以内に開催される定時株主総会の終結時、監査役は選任から4年以内に開催される定時株主総会の終結時までの任期ですが、任期伸長規定を置くことで、会社としては、ほぼ2年おきに必要だった役員変更登記を10年間しなくて済むため手間も経費も削減できるというメリットがあります。
実際に多くの会社が任期を10年に伸長しています。
ただ、任期を伸長することで、役員を解任させたい場合に残りの任期分の役員報酬を損害賠償請求されるなど、任期を伸長したことがかえって会社にとってのデメリットとなることもあるので注意が必要です。
また、次の役員改選時期がずいぶん先になってしまうため、うっかり登記を忘れてしまう可能性も十分にあります。
【登記義務】
そもそも、商業登記は、取引の安全と円滑を図るために会社の一定事項(商号、本店所在地、役員等)を公示する制度ですので、それらに変更があれば一定期間内に登記を申請する義務が課せられています。
法律の規定では、原則として変更があったときから2週間以内に登記をしなければいけません。
変更から2週間以内に登記をしなければ、法律上は違反していることになりますが、即座に何かしらの制裁を受けるものではありません。
【懈怠と過料】
前述したとおり、登記事項に変更があった場合は、原則として2週間以内に登記をしなければなりません。
この規定に違反した場合は、行政罰として100万円以下の過料に処せられる場合があるとされています。
現実的には2週間ではなく5ヶ月とか6ヶ月以上の間、登記をしていないことによって過料の請求がくることが多いようです。これは、あくまで裁判所の運用の問題でもありますので、公にされているものでもなく、過去に過料にあった会社がどのくらい登記を懈怠していたのかを基に記載しているに過ぎません。
過料の額はケースバイケースですが、6ヶ月ほど役員変更登記を懈怠している場合に、4万円ほどの過料がきたとの話もありますし、4年もほったらかしていた場合には、10万円ほどの過料がきたとされたものもあります。
余談になりますが、過料の通知は、法務局からではなく地方裁判所から代表者の個人の住所宛に届きます。
【ご質問への回答】
ご質問の件ですが、選任時から1年3ヶ月も経過しているため過料の制裁は免れないでしょうが、このまま放っておくと過料の金額がどんどん多くなっていきますので、速やかに取締役Dの就任登記をすることをお勧めします。
回答者 司法書士 安藤 功
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