司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成25年1月号》
少数株主の排除について
  質 問

【質問者】  甲

【質問内容】
 当社の株主名簿には、既に連絡が取れなくなった株主が数名います。それぞれの株主の持ち株数は全体の数パーセントであり、基本的に株主総会決議で影響を及ぼすような数字ではありません。このような、所在不明の株主に限らず、今後は既存の株主に相続が発生したりして、株式が分散することも起こりえます。今のうちに何とか少数株式を整理しておきたいと考えておりますが、どのような手法がありますでしょうか。教えてください。

  回 答

 近年、企業は生き残りのために企業買収や合併などの組織再編を利用したりしますが、その際に、少数株主の存在が弊害となるケースは少なくありません。持ち株数からして発言権をほとんど持たない株主でも、友好的に株式譲渡に応じてくれない場合などは、法的に株主整理をしていかなければならないこともあります。また、事例のように、相続によって株式が分散されてしまったり、既に所在が分からなくなってしまった株主の存在もやっかいです。
そのような場合に、どのようにして少数株主を整理していく方法があるのか代表的な2つの方法を紹介いたします。
【全部取得条項付種類株式の活用】
 全部取得条項付種類株式とは、その種類の株式について、会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式のことです。イメージが持ちにくいかもしれませんが、以下、簡単に手続きの流れを説明します。
(1) 定款を変更して、種類株式発行会社に移行する。
(2) 既存の普通株式の全てに、全部取得条項をつける定款の変更決議をする。
(3) 全部取得条項付種類株式を、会社が普通株式を対価として取得する旨の株主総会決議をする。ここで、少数株主が受け取るべき普通株式につき、端数が生じるように調整し、端数が生じた少数株主については現金で清算する。
ここで、交付される現金は、会社が株式の価格を算定して上で決めることになりますが、会社からの買取価格に不服がある少数株主については、裁判所に価格決定申立をすることにより、裁判所で株式の買取価格を判断してもらうことになります。

【株式の併合】
 これは、数個の株式をあわせて少数の株式とし、もともとの少数株主の保有株式を1株未満の端数に調整することで、その端数分を金銭で買い取る方法です。例えば、少数株主が保有する株式が5株とした場合に、100株を1株に併合する株式併合決議をし、5株しか持たない株主に関しては、端数が生じるためお金で精算するというものです。ただし、この方法を利用して、過去に8割程度の株主を排除したケースがあり、相当の批判がありました。法的に認められた制度ではありますが、少数株主の保護の観点を忘れてはならず、乱用とならないように注意が必要です。

【メリット・デメリット】
  全部取得条項付種類株式を利用した少数株主排除策は、短期間で目的を達成することが出来るメリットはあります。また、株式の併合を利用する場合は、絶対的な株式数が減ることにより、株主の管理コストを削減できるメリットがあります。しかし、どちらの制度も、それなりに費用がかかったり、排除された株主の反感がもとで価格面など裁判になるケースもありえることはしっかりと理解しておかなければいけません。
少数だからとないがしろにするのではなく、マイノリティの保護の観点も忘れないように気をつけましょう。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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