司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年6月号》
会社法改正シリーズ〜社外取締役に関する改正について〜

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は、平成27年5月1日に施行される改正会社法の中で、監査役における登記事項の改正について記載しました。今回は、社外取締役に関する改正について前回同様に難しい論点の改正は省き、実務に直結しそうな部分についてのみ触れていきたいと思います。

【社外取締役の定義の改正】
 社外取締役については、以下のとおり定義が変更されました。

 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件(イ〜ホ)のいずれにも該当するものをいうとされました。

 イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役であったことがないこととされ、過去要件が過去10年内に緩和されました。

 ロ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 ハ 当該株式会社の親会社等又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこととされ、親会社要件が追加されました。経営の支配者である株主など個人や親会社の業務執行者だけでなく、親会社の社外取締役も不可となりました。

 ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等の業務執行取締役等でないこととされ、兄弟会社等グループ会社要件が追加されました。これにより、親子会社の社外役員は兼任できないが兄弟会社の社外役員の兼任は可となります。

 ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等の配偶者又は2親等内の親族でないこととされ、近親者要件が追加されました。当社社外取締役の近親者も不可ですが、重要でない使用人の近親者は可とされます。

【改正理由】
 改正前の社外取締役の定義は、現在要件と過去要件の両面から、「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。」というものでしたが、これでは過去に1度でも当社及び子会社の業務執行に従事した者は社外取締役になれないだけでなく、その反面、親会社や兄弟会社で業務執行に従事した者は社外取締役になれることになり不均衡がありました。社外監査役の定義についても同様の問題がありました。
 このように、従来は社外取締役や社外監査役の範囲についての定義があまりにも大雑把であったため、経営の監督・監査に相応しい範囲内に限定するとともに、厳しすぎる過去要件を緩和する必要性が生じ、この度の改正に至りました。

 まだまだ不明な点が多くありますが、少しずつ実務上の注意点等も浮き彫りにされることでしょう。ご不明な点は、専門家にしっかり確認されることをお勧めします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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