司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年11月号》
不動産売買と成年後見について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は「家族信託」についてお話をさせていただきました。
 今回は、「不動産売買と成年後見」をテーマとします。

 最近、不動産の登記案件のご依頼をいただく際に、「売主さんが少し判断能力が微妙なんです」などのお話をいただくことがあります。
 当然ながら、判断能力がない人が行った法律行為は無効となるため、このような相談には十分に注意をしなければいけません。万が一、関係者の一部の一方的な利益のために安易に依頼を受けるようなことがあれば、契約そのものが無効となり、特に買主や融資先の銀行などの損害は計り知れません。そこに関わる宅地建物取引主任士や司法書士は専門家としての責任を全うしていないことになり、厳しく罰せられることになります。

 我々司法書士がこのような相談を受ける際は、事前に当事者に会い、判断能力、意思能力をしっかり判断する必要があります。判断能力に問題があるのならば、家庭裁判所に対し、その程度に応じて、補助開始の審判申立、補佐開始の審判申立、後見申立ての手続きを行い、代わりに法律行為を行う人を選定したうえで、法律行為を行う必要があります。判断能力の有無がこちらで判断できない時には、医師の診断書などで裁判所の手続きが必要なケースかどうかの判断をすることもあります。
 裁判所への申立には一定の時間と費用がかかりますが、後々に契約そのものが無効となり多くの当事者に不測の損害を与えてしまうことのリスクを考えると、当然のことなのです。

 不動産所有者の親族からの依頼に基づき、「私がすべて一任されている」などいつまでたっても肝心の所有者が現れないようなケースは要注意です。今回は高額取引となりやすい不動産についてふれましたが、日常生活で行う様々な契約についても同じことが言えますので、後々に契約が無効とされることのリスクを回避するためにも、まずはしっかりと相手方の判断能力を見極めることが大切です。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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