税金ワンポイント

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福岡!企業!元気!のための税金ワンポイント 《平成24年5月号》
貸付金利子等の未収利息の計上見合せ

 前月号で,「貸付金利子等の帰属時期の原則と未収利息の計上見合せ」について取り上げましたが,今回は,「未収利息の計上見合せ」に関する裁判例の一部をご紹介いたします。

 本件各事業年度の乙の資産と負債との関係については,前述のとおりであるから,乙の負債はその資産を超過しており,乙が債務超過(単なる資産と負債の総和としての債務超過のこと。)となっていることが認められるが,法人税法22条2項の解釈上,これのみをもって,本件未収利息について益金不算入として確定申告することが許されるというものではない。

 この点,本件貸付にかかる契約書が本件各事業年度前には作成されていないこと,本件各事業年度前の貸付の時に原告の取締役会議事録が作成されなかったこと,本件貸付金について利息が付されていないこと,本件貸付金について人的物的担保が徴されていないこと,原告が乙を中心とする同族会社であったことが認められることからすると,本件貸付は,その利息金を得るべきか否かはともかくとして,独立対等の当事者間における合理性ある貸付けであるとは評価しがたい。そして,上記乙の負債のほとんどが本件貸付金残高である。そうすると,乙の債務超過は,合理性ある貸付けとは評価しがたい本件貸付金によって左右されるものであるから,社会通念上,単なる負債と資産の総和による債務超過とは同程度に,乙には益金計上に相応する経済力がないと評価することができない事情があると認められる。

 そして,前述のとおり,本件各事業年度当時,乙は原告代表取締役としての収入を得ていたこと,乙が原告代表取締役としての退職金を得られる可能性があったことに加えて,一部ではあるが乙は本件貸付金について返済を行っていること,乙の負債で本件貸付金とは関係ない○○に対する借入金については継続的に元本,利息の返済をしていることが認められることからすれば,乙の支払能力が客観的に欠如していたものとは認められない。なお,上記にかかる乙の本件各事業年度当時の収入等と,乙の負債の額との間には相当の差があることは否めないものの,前述のとおり,乙の債務超過については,単純に額面どおりの債務超過と評価できない事情が認められる以上,乙の支払能力の有  無においても,その額面上の差による影響はないというべきである。

 以上の乙の債務超過の具体的事情や支払能力に関する事情からすると,乙は支払能力が欠如し,客観的にやむを得ない事情があり,それが一般的かつ長期にわたって継続しているとはいえず,益金計上する経済的実質を欠く場合にはあたらない。したがって,乙の有する有価証券の価値及び処分可能性如何にかかわらず,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(法人税法22条4項)に従えば,原則どおり,発生主義の観点から,本件貸付金にかかる未収利息も益金として算入すべきであるといわざるを得ない。

 原告は,本件通達の字句解釈を前提に,単に乙の資産と負債の総和において債務超過であれば本件未収利息を益金として算入することは違法であると主張する。しかし,本件通達にいう「債務者が債務超過に陥っていることその他相当の理由」についても,法人税法22条2項における一般に公正妥当と認められる会計処理の原則(企業会計原則)及び社会通念に照らし,債務者が単に資産と負債の総和において債務超過というだけでなく,客観的にやむを得ない事情があって,債務者が客観的な支払能力の欠如の状態にあり,この状態が一般的,かつ長期にわたって継続されているものと認められ,結局,当該未収利息が受取利息として益金計上する経済的実質を欠くような場合に益金不算入として決算処理ないし法人税の確定申告をすることが許されると解される解釈運用を示したものと解するべきであり,上記原告の主張は原告独自の見解であり,採用できない。

(TAINS)Z257-10831より引用

 一般に債務超過とは積極財産(資産)の合計額が消極財産(負債)の合計額に満たないことをいうけれども,本件通達にいう「債務超過その他相当の理由」は,単に債務者の積極財産(資産)と消極財産(負債)の合計額を対比するだけで決されるものではなく,その趣旨から,客観的にやむを得ない事情により,債務者の支払能力の欠如が認められ,一般的かつ継続的に支払ができない客観的状態にあると認められる場合をいうと解すべきである。

(TAINS)Z254-9642より引用

回答者 税理士 鵜池 隆充
鵜池隆充税理士事務所 税理士鵜池隆充
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