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T 法人税関係
1.個人事業当時の在職期間に対応する退職給与の損金算入(法基通9-2-39)
個人事業を引き継いで設立された法人が個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その退職が設立後相当期間経過後に行われたものであるときは、その支給した退職給与の額は、その法人の損金として取り扱われることになります。
2.相当期間
上記の「相当期間」については、一般的には所得税の減額更正ができる期間との関連から5年程度ではないかと考えられます。
3.相当期間経過前の退職の場合
個人事業主負担分があるとして法人の損金の額に算入されない部分の退職金の額は、その法人としては、その個人事業主から負担額の返済を受けることが必要となりますが、その返済を受けない場合には、その個人事業主がその法人の役員又は使用人となっているかどうかにより、給与(賞与)又は寄附金として取り扱われることになります。
4.個人事業主及びその事業専従者であった方について
個人事業主及びその事業専従者であった方については、その個人事業当時の勤続期間を通算しての退職金の支給は認められません。
U 所得税関係
1.個人事業を引き継いで設立された法人の損金に算入されない退職給与(所基通63-1)
個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その支給した金額のうちに、個人事業当時の事業主の負担すべきものとして当該法人の所得の金額の計算上損金に算入されなかった金額があるときは、その金額については、その事業主が支出した退職給与として法第63条の規定を適用します。
2.事業を廃止した場合の必要経費の特例(所法63)
居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかったとしたならばその方のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その方のその廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得に係る総収入金額がなかった場合には、当該総収入金額があった最近の年分)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入します。
3.退職者の退職所得控除額に係る勤続年数
(1) 前に勤務した期間を通算して支払われる退職手当等に係る勤続年数の計算規定を適用する場合(所基通30-10)
令第69条第1項第1号ロ及びハただし書の規定は、法律若しくは条例の規定により、又は令第153条《退職給与規程の範囲》若しくは旧法人税法施行令第105条《退職給与規程の範囲》に規定する退職給与規程において、他の者の下において勤務した期間又は前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間(下記(2)の所基通30-11においてこれらの期間を「前に勤務した期間」といいます。)を含めた期間により退職手当等の支払金額の計算をする旨が明らかに定められている場合に限り、適用するものとされます。
(2)前に勤務した期間の一部等を通算する場合の勤続年数の計算(所基通30-11)
令第69条第1項第1号ロ及びハただし書に規定する場合において、退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに、前に勤務した期間のうちの一部の期間又は前に勤務した期間に一定の率を乗ずるなどにより換算をした期間を含めて計算するときは、それぞれ当該一部の期間又は当該前に勤務した期間を同号本文に規定する勤続期間に加算して勤続年数を計算するものとされます。
(3) (1)又は(2)以外の場合
法人の退職給与規程等において、個人事業当時を含めた勤続期間によって退職手当等を計算する旨が定められていない場合には、個人事業当時の勤続期間を通算して勤続年数を計算することは認められません。
以上
回答者 税理士 鵜池 隆充
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