財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成25年1月号》
管理会計の基本−販売管理

 こんにちは。今回は、管理会計についての話を取り上げたいと思います。
 企業活動は、経営資源を投入して、商品やサービスを顧客に提供することにより、財貨を獲得し、獲得した資源を配分するプロセスです。
 損益計算書を見てゆきますと、「売上高」、「売上原価」、「販売費及び一般管理費」、「営業外損益」、「特別損益」、「法人税等」といった項目があります。
 一番最初に来るのは、「売上高」ですね。企業である以上、いかに「売上高」を作ってゆくのかが、最も大切なことだと思います。
 企業活動に置き換えると、「販売活動」ということになりますが、会計の視点でどのような管理を行って行くべきかを見てゆきたいと思います。

【販売管理の切り口】
 「販売活動」を管理会計の視点から見ると、「損益管理」、「与信管理」、「不正防止」といった切り口に分けることができると思います。

【「損益管理」の視点】
 企業の営業活動をどのように細分化してゆくのかが肝心です。
 まず、会計を管理したい項目毎に区分して、会計システムや業務システムに設定をすることから始まります。
 実務的に導入しやすいのは、事業種類(サービスライン)別・部署別の管理です。市販の会計ソフトでも、簡単に設定ができるからです。
 事業種類(サービスライン)は、売上高の小科目として設定します。ホテル業を例にとると、「宿泊売上」、「宴会売上」、「食堂売上」といった形です。
 部署は、おおよその会計ソフトには、部署コードの設定がありますので、実在する部署を設定します。
 販売管理の観点からは、区分された売上高に対して責任を負う人を決めて、その人毎に予算を割り振って、予実管理を行って、達成度を評価し、改善点を検討するという段取りになります。
 セールスミックスの検討や営業担当者の評価指標など、利用目的に応じて細分化する項目は変わってきます。例えば、商品別売上高、得意先別売上高、販売担当者別売上高などが挙げられます。
 また、損益管理上、売上高の損益区分と原価や販売管理費の損益区分が整合するように設定することで、損益区分別の採算管理にも役立つこととなります。景気の上昇が見込みにくい時代では、売上高だけではなく採算性も管理することが大切になりますね。

【「与信管理」】
 近年の不況下では、企業倒産も後を絶ちません。大口の得意先の倒産によって企業が傾いた会社をいくつも見てきました。このようなリスクをどのように防ぐのかは、企業継続にとって欠かせない管理活動です。
 いくつかの与信管理の手法を紹介します。
(1) 新規取引先の信用調査と承認手続
 (ア) 営業担当者が、「取引承認申請書」に対象企業の情報、予定する取引内容・取引条件、上限取引金額(与信額)を記載し、信用調査会社の資料、新聞記事、企業ホームページなどを添付し、上長に提出する。
 (イ) 上長は、申請内容を吟味し、取引承認を行う。リスクの高い先や金額の大きい先については、管理部門や取締役会の承認事項とする。
(2) 債権の滞留管理
 (ア) 管理部門にて、売掛金の滞留管理表を作成する。
 (イ) 管理部門より、延滞状況を営業部門に連絡し、回収予定を報告させるとともに早期回収を促す。
 (ウ) 一定期間滞留している得意先については、状況を把握した上で、上限取引金額(与信額)の引下げや債権保全策を講じる。
 (エ) 一定期間滞留している得意先については、会計上も早めの貸倒引当金を設定することで予期せぬ損失計上となることを防ぐことができる。
 ※ 売掛金の滞留管理表について、手作業の事務コストがかかる場合は、売掛入金の期日管理が可能な販売管理システムを活用することが考えられます。
(3) 債権保全<貸倒れが懸念される先に対して>
 (ア) 滞留している売掛金について、内容証明で借用書を作成する。
 (イ) 担保又は保証金の差し入れ、保証人を要求する。
 (ウ) 現金決済に取引条件を変更する。
 (エ) 保証会社や債権回収会社を利用する。

【「不正防止」】
 営業担当者は、日常的に売上のノルマに追われており、そのプレッシャーから実態のない売上を計上してしまう可能性があります。また、現金回収やレジ売上を伴う企業は、その現金に目がくらんでしまう従業員が出てしまう可能性があります。
 未然に防止するには、従業員に対する教育研修の徹底と罰則の明示、得意先の納品受領書の入手・保管、現金回収自体の廃止、レジ現金を少なくすることやレジ締めの回数を増やすなど、会計手法以外の方法によることが多いかと思います。
 では、生じた不正をいかに早期に発見するか?に、目を向けてみます。
 すでに述べました損益管理と与信管理(滞留管理)と同じ手法を不正発見の目的で活用することになります。
 組織ぐるみの不正の場合は、別ですが、不正は特定の者が関与することが大半です。
 具体的な事例としていくつか紹介します。
● 架空売上の発見
  営業担当者別の損益管理表で、利益率の異常値がある場合に取引実態があるかを確認する。
● 押し込み売上の発見
  業績評価月の翌月の営業担当者別の値引・返品リストを作成し、異常値の者に事情を徴収する。
● 売上金の着服
  得意先元帳や滞留管理表から営業担当者別に売掛金回収率(売掛金に対する回収額の比率)を計算し、異常値のある者に事情を徴収する。
● レジ現金の着服
  レジ締め毎の損益管理表を作成し、異常値のでる時間帯に必ず働いている従業員の監視を強化する。
 今回は、販売管理の会計ということで、目標管理、得意先事故への対処、社内事故への対処ということで、述べてみました。売上高は、企業活動の源でもあり、かつ、事故が最も多い科目になります。そのような視点で一度社内の振替りを行ってみることもいかがでしょうか。

 ご意見・ご要望などありましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。
 なお、当記事は、私の私見であることをお断り申し上げます。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
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