財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成25年3月号》
管理会計の基本−損益分岐点

 こんにちは。今回の散歩みちは、「損益分岐点」について触れてみたいと思います。経営分析などのテキストでは、まず最初に出てくる項目でご存知の経営者も多いことと思います。

【損益分岐点の構造】
 まず、管理会計上の利益を数式に表わしたいと思います。決算書の利益(財務会計上の利益)と異なり、「利益を上げるには、いくら売り上げるとよいのか?」というテーマで、損益を分析します。
売上高(S)−変動費(V)−固定費(F)=利益(R) ・・・(1)
※ 限界利益=売上高(S)−変動費(V)=「付加価値」
「変動費」とは、売上(販売)に伴って比例的に生ずる費用です。例えば、原材料費、荷造運賃、販売手数料などが挙げられます。
売上高から変動費を差し引いた利益を「限界利益」といって、その企業の獲得した「付加価値」を表します。
「固定費」とは、売上高の増減に係わらず、固定的に生ずる費用です。例えば、人件費、水道光熱費、賃借料、減価償却費などが挙げられます。
変動費は、売上に比例しますので、以下のように表せます。
変動費(V)=変動費率(a)×売上高(S) ・・・(2)
これを(1)式に当てはめると、
売上高(S)−変動費率(a)×売上高(S)−固定費(F)=利益(R) 
この構造を使って、損益分岐点売上高(利益が0円となる売上高)を計算してみましょう。
売上高(S)−変動費率(a)×売上高(S)−固定費(F)=0円
@ 記号で置き換えます。 S−aS−F=0円
A Sでくくります。   S(1−a)−F=0円
B Fを移項します。   S(1−a)  =F
C S=をだします。   S       =F÷(1−a)
 損益分岐点売上高(S)=固定費(F)÷(1−変動費率(a)) ・・・(3)
となります。 つまり、企業に係るコストを変動費と固定費に分けて分析することができれば、損益分岐点を把握することができるということになります。

【短期目標利益管理とその活用】
   それでは、(1)式に今期の利益目標100を置いて計算してみましょう。
売上高(S)−変動費(V)−固定費(F)=100 ・・・(4)
さきほどと同じように、S= を計算すると、
 目標利益売上高(S)=(固定費(F)+100)÷(1−変動費率(a)) ・・・(5)
となります。 多少数式遊びのようになりましたが、企業が管理会計上のコスト構造(固定費・変動費)を理解できていれば、売上目標の設定が可能となるということです。
経理部門の担当者であれば、事細かに会社の費用を把握できますが、営業担当者はそうはいきません。営業担当者には、売上目標という形でのノルマや評価の方が馴染みやすいでしょう。
つまり、経理部門の担当者が企業のコスト構造をしっかりと分析し、損益分岐点や目標利益売上高を解析し、この結果を営業部門へ売上目標として展開してゆくことができれば、企業全体としての利益管理が有効に行うことができるということをご理解ください。

【変動費・固定費の管理】
 最後に、経理部門の担当者が変動費・固定費をどのように管理をするのかについて、少し触れておきたいと思います。前回の記述になりますが、各費目が変動費なのか固定費なのかをまず把握してください。
 「変動費」:材料費、商品仕入、販売促進費、荷造運賃等
 「固定費」:人件費、支払家賃、減価償却費、本社経費等

 「管理会計用のコスト」の損益計算
売上高
変動費
限界利益(付加価値)
固定費
営業利益

変動費率は、変動費の合計を売上高で割ることで計算できますので、(3)式、(5)式に当てはめれば社内的に告知すべき損益分岐点や目標利益売上高は計算できます。

経理部門の担当者の役割はそれだけではありません。分析した変動費・固定費が効果的に使われているのか?無駄な支出が無いのか?という視点で、利益率が良くなるようなコスト対策を検討しなければいけません。

変動費については、売上に伴い必ず発生するコストということですので、利益率の向上策は単純ではありません。ただ、視点は2つしかありません。
◆売上単価を上げられるか
◆変動費単価を下げられるか
コスト面だけをみますと、例えば配送費について、業者の相見積りを取ることで単価削減ができるかもしれません。あるいは、受注〜販売までの手順を標準化することでコストを削減することができるかもしれません。

固定費については、その支出が無駄でないか。切り詰めることができるのではないか。という視点で、比較的単純にその削減策は思いつくことと思います。
ただ、気を付けなければならないことは、固定費の支出が会社の事業価値やブランド力や信用に繋がっていることが多く、その企業の信用の基となっている肝心なコストを安易に削減しないという発想が必要です。

少し、一般的な議論となりましたが、分析の構造はとても簡単ですので、顧問税理士の先生とも相談しながら、一度、ご自身の企業に当てはめてみてください。
企業の活動と損益計算書が感覚として繋がってくると思います。

 ご意見・ご要望などありましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。
 なお、当記事は、私の私見であることをお断り申し上げます。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡県福岡市博多区綱場町6-15 川野ビル1F
TEL092-272-0710 FAX092-272-0711
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