財務会計の散歩みち

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成26年4月号》
「役員退職金はいくらまで?」

 こんにちは、気がつくと今年も4分の1が過ぎています。年を取るごとに日が立つのが早くなるとは言いますが、本当に実感してしまいます。企業にとっても、やはり同じようなことが言えます。創業期、成長期、成熟期、承継期などのライフサイクルを過ごす中で、気がつくと世代交代を本気で考えないといけない時期に差し掛かっていたということで、ご相談をお受けすることになります。
時期が迫れば迫るほど、対処療法ということで採れる選択肢が少なくなってきますし、既にやってしまったことについては、取り返しがつかないこともあります。やはり経営は先見の明をもって予防療法を心掛けることが肝要といえます。これを言い換えると「戦略的経営」ということになりますね。
さて、今回は「役員退職金」を取り上げます。

とある保険外交員とのやり取り
保険外交員:「社長、そろそろ退職資金も考えて、役員保険に加入しませんか?」
社   長:「どんなメリットがあるんだい?」
保険外交員:「今加入すれば、社長が65歳になった時に、返戻率MAXになります。
       返戻金の受贈益と役員退職金を相殺すれば税金もかかりません。
       掛金についても、半額損金でお得です。」
社   長:「なるほど、で、どれくらい掛ければいいのかな?」
保険外交員:「社長の報酬を月200万円まで上げてもらって、
      65歳で在任期間35年ですから、
      ま、とりあえず200万円×35年×3.5倍=2億4,500万円!!」
社   長:「そんなにもらえるのか!」
保険外交員:「はい!3.5倍までOK!という判例がありますから。」
 いやはや、とても危なっかしいやり取りです。
 その後、社長さんは65歳で無事に引退し、2億4,500万円だけでなく創業者利得として特別功労金5,500万円の併せて3億円を受け取ります。
 しかし、その次の年に税務調査に入ってこのような指摘を受けました。
 1. 役員報酬については、60万円は不相当に高額なので、認めない。
 (否認額)60万円×12ヶ月×5年分=3,600万円
 2. 役員退職金については、相当月額140万円×35年×3.0倍=1億4,700万円までしか認めない。
 (否認額)2億4,500万円−1億4,700万円=9,800万円
 3. 特別功労金も退職金と同じだから認めない。
(否認額)5,500万円
 なんとも、合計1億8,900万円の所得隠し、追徴税を含み9,700万円の請求を受けることとなりました。
 役員報酬、役員退職金について、当社ならいくらまで認められるのか?認められるようにするには、どのようにすればよいのか?結果として、会社と個人のキャッシュ・フローはどうなるのか?
 保険外交員は、税金のプロではありませんので、会社がきちっと税務リスクを把握した上で、意思決定をしなければなりません。大まかな税務ルールは理解しておいた方が良いと思いますし、難しければ、顧問税理士に保険の説明に立ち会ってもらうといった対処もありだと思います。
 <事例は判例や税務実務を参考としてフィクションであり、実在する話ではありません>

Q1.役員退職金はいくらが適正なのか?
 役員退職金(役員退職給与)の計算に関して、最終報酬月額×在任年数×功績倍率とする方法(功績倍率法)が一般的かと思います。但し、これは税法のルールではありません。あくまで一般的な役員退職金の計算の実務に過ぎません。  税法上は、実質基準による判定となります。
 【実質基準】
 業務に従事した期間・退職の事情・類似(業種・規模等)法人の役員退職給与の支給状況等に照らし、相当と認められる金額まで
<ポイント>
 よく「功績倍率は何倍まで認められるのか?」という質問を受けます。税務訴訟等において、功績倍率が争点になっているケースが多いからだと思います。
 しかしながら、税務訴訟等は、「実質基準を個々の企業に当てはめた場合に、その功績倍率が妥当かどうか。」について争っているのであって、この判例があるからといって、他の会社もその功績倍率が認められるという訳ではありませんので、ご注意ください。  然りながら、実務は判例等を参考に、功績倍率を決めて行くことになろうかと思います。税務調査等に対処するためには、功績倍率の根拠を顧問税理士とも協議した上で文書として残すこと前もって、役員退職慰労金規程を作成しておくことといった準備をしておくことが重要かと思います。
 (役員退職慰労金規程は、支給の根拠として有効な対策になりますが、退職直前になって慌てて作成したような場合に、税務当局が税金逃れ目的の規程は認めないとしたケースもありますので、ご注意ください。)

Q2.特別功労金を支給するケース
 創業者など特に企業に貢献した方に対し、通常の役員退職金の他に特別功労金を支給するケースがあります。役員退職慰労金規程に、特別功労金を支給することができる旨を規定している企業もあります。
しかしながら、税務上は、役員退職金に含めて検討されます。不当等に高額と認められれば否認対象となります。

Q3.役員報酬はいくらが適正なのか?
 役員報酬(役員給与)については、不相当に高額な部分については損金として認められません。その判定基準には形式基準と実質基準の2通りの基準があります。  【形式基準】
 定款又は株主総会の決議で定められた役員報酬限度額まで
 (使用人兼務役員の使用人部分を除くことは可能)
 【実質基準】
 職務内容・法人の収益・使用人給与の支給状況・類似企業(業種・規模等)の役員報酬の支給状況等に照らし、相当と認められる金額まで
<ポイント>
役員報酬限度額を定めていないケースは、実質基準のみによる判定となりますが、そもそも会社法違反です。役員は違法行為の責任を負うことになります。
長男を平取締役にして、他の平取締役より多くの報酬を支払うようなケースは、職務内容が伴っていないと否認されるリスクが高くなります。
税務当局は、実質判定を独自に行いますので、会社としても実質判定を主張できるような道理を準備しておく必要があります。

 是非、皆様のご意見・ご要望をお聞かせください。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡県福岡市博多区綱場町6-15 川野ビル1F
TEL092-272-0710 FAX092-272-0711
HP: http://smaken.jp/user/usc_to.cgi?up_c1=43440
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
                     前へ<<               >>次へ
財務会計の散歩みちリストに戻る