財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成26年5月号》
「給料はいくらまで?」

 こんにちは、3月決算の会社は、新年度を迎え新卒採用や年度決算と慌ただしい日々を過ごされていることと思います。消費税増税の影響も徐々に顕在化しているようです。3月までの駆け込み需要の影響を感じている一方で、3月までに儲かった企業が多少投資や交際に資金を回せるようになっているような気もします。

 さて、先日、「新年度からパートさんの給料を上げようと思うが、扶養から外れるので、いくらまで増やさないといけないのでしょうか?」との相談を受けました。「現時点では、概ね額面150万円の年収にするといいでしょう。」といった話をしました。
 一方で、新聞記事では、「配偶者控除の廃止を含めて検討を進める」といった話題も耳にします。世の中はどんな流れなのでしょうか?
 今回は、「給料はいくらまで?」というテーマで、本年4月14日に開催された第6回税制調査会の内容を紹介します。

税制調査会の議論の背景
 第6回調査会は、「働き方の選択に対して中立的な税制・社会保障制度について等」という議題でした。財務省(所得税)、総務省(住民税)、厚生労働省(社会保険制度)の各担当者が現状の制度の課題認識ということで、情報提供のみを行うというものでした。
 この議論の背景には、政府の掲げている政策があります。平成25年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略‐JAPAN is BACK−」と平成26年1月20日に産業競争力会議が発表した「成長戦略進化のための今後の方針」の中で、「女性の活躍促進」というテーマが挙げられ、その中の政策のひとつに「働き方の選択に対して中立的な税制・社会保障制度の在り方を検討する」といったことが取り上げられています。  「働き方の選択に対して中立的」というのは、どういうことでしょうか?

所得税率などについて
 財務省の担当官が言うには、日本の所得税は、減税を繰り返した結果、諸外国に比べて、累進税率がなだらかで、かつ、免税となる最低所得の金額が高くなっているそうです。
 昭和61年分では、住民税も含む最高税率が88%だったのが、現在は50%(平成27年分から55%)、基礎控除や配偶者控除も当時33万円から現在38万円となっているそうです。
 結果として、GDPに占める所得税収の割合が、欧米が7.5%〜12.3%であるのに対し、日本は5.3%と極端に低く、特に給与所得については、年収1,000万円未満の給与所得者の税率が各国に比べて極端に低いとしています。また、低税率の納税者の割合が各国に比べて異常に多いといった説明もありました。  私の印象としては、「年収1,000万円以下の給与所得者の所得税が低すぎる。」ということの説明だったように思います。

所得控除について
 平成25年の予算ベースで、所得税の対象となる収入が約250兆円の内、所得控除等の合計が約130兆円あり、課税対象となる所得が約110兆円しかなく、これに対する所得税額が約11.6兆円しかないそうです。つまり、所得控除等の額が多すぎるということでしょう。
 所得控除等130兆円の主な内訳は、給与所得控除約60兆円、基礎控除・配偶者控除・扶養控除等約30兆円、社会保険料控除25兆円などになります。

 給与所得控除については、平成24年の税制改正に引続き平成26年の税制改正においても、給与所得控除の上限が引き下げられています。
  ・平成25年分以降 給与収入1,500万円以上 給与所得控除上限245万円
  ・平成28年分   給与収入1,200万円以上 給与所得控除上限230万円
  ・平成29年分以降 給与収入1,000万円以上 給与所得控除上限220万円
   ※住民税は、翌年分から適用
 説明では、それでも給与所得控除額が各国と比較して多いと結論づけています。

 つぎに、配偶者控除について大きく取り上げています。配偶者控除は、もともと扶養者を抱える納税者に対する税負担を押さえるための控除で、特に配偶者については相互扶助の立場であることから、扶養控除とは別に配偶者控除を定められたもののようです。配偶者の給与収入が103万円(給与所得控除65万円、基礎控除38万円)を超えた場合の手取の逆転現象を避けるため、配偶者特別控除の制度が設けられています。
 今回の説明では、被扶養の配偶者が給与収入を得ている場合に、配偶者自身が103万円までの所得控除等を受け、かつ、扶養している納税者も配偶者控除や配偶者特別控除を適用できるのは、独立した男女が同等の収入を得ている場合の課税と比較して、2重控除になっているのではないか?という問題提起でした。以下のようにまとめられています。
 イ 男女共同参画が進んでおり、また、配偶者の家事労働には納税者本人にとっての経済的価値等がある
 ロ 現行制度は配偶者の就労の中立性を阻害している
 ハ 納税者本人は配偶者控除等の適用を受け、配偶者が基礎控除の適用を受けることで、二重に控除を享受する場合がある
 ニ 配偶者控除等を見直し、その財源を子育て支援に充ててはどうか
 これが、冒頭にいう「働き方の選択に対して中立的」ということの説明のようです。

社会保険制度
 厚生労働省の担当官から、年金制度・健康保険制度ついての説明もありました。
 ご承知のとおり、厚生年金・共済年金・健康保険等の被保険者の配偶者のうち年収130万円未満の者は、扶養者として加入できるという制度があります。
 こちらについては、所得税の配偶者特別控除のような制度は設けられていませんので、配偶者の給与収入が130万円を超えた場合に、手取の逆転現象が生じます。したがって、パート収入等を得ている方は、「扶養の範囲で」としている方が多く存在しているようです。
 ここでは、平成24年8月に成立した年金機能強化法についての説明がありました。
 現行は所定労働時間又は日数の概ね4分の3以上(週30時間)就労する場合に厚生年金・健康保険に加入するという仕組みです。これについて、平成28年10月より、所定労働の概ね2分の1(週20時間)就労する者の内、一定の条件に合致する者ついても加入させようという趣旨の法改正のようです。社会保険についても、短期労働者を保険加入させ保険料収入を増やそうとする動きであることは間違いがなさそうです。
 社会保険の加入条件の拡大は、労働者だけでなく事業主負担も増える話になります。今回の法改正では、事業主からの抵抗が強く、従業員501人以上の企業について適用するなど、非常に狭い範囲での拡大となったそうです。担当官の説明が悔しげだったのが私にとっては驚きでした。

さいごに
 今回は、散歩みちにちなんで、日頃のお客様からのご相談などから、気に留めていることについて、国のホームページなどを散歩してご紹介いたしました。政府から諮問を受けている立場の人、公務員として制度設計に係わっている人たちの発想がどこからきているのか大変参考になりました。この方々が、中小企業の経営者にとって有意義な制度設計を図っているとは、必ずしも思いません。しかし、政治が続く限りは政府の議論を通じて将来の制度が作られていきます。いかに適応するか、いかに利用するかを先に考えるということで、前向きに活かしてゆけたらと思います。
 (ご参考:第6回税制調査会 http://www.cao.go.jp/zei-cho/chukei/)

 是非、皆様のご意見・ご要望をお聞かせください。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡県福岡市博多区綱場町6-15 川野ビル1F
TEL092-272-0710 FAX092-272-0711
HP: http://smaken.jp/user/usc_to.cgi?up_c1=43440
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
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