財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成26年8月号》
資金繰り管理 −運転資金その1

運転資金のからくり
  こんにちは。資金繰り管理の2回目ということで、今回は、売上と仕入に係る資金繰りについて触れたいと思います。一般に「運転資金」と言われます。

 物販業の会社は、商品を仕入れ、仕入代を払い、在庫を管理し、商品を売上げ、代金を回収します。資金繰りの観点では、3つのポイントを管理します。
 「仕入代金をいつ払うのか」(買掛サイト)
 「在庫をどれだけ保管するのか」(適正在庫)
 「売上代金をいつ払うのか」(売掛サイト)
 買掛金の支払時期が、売掛金の入金時期より後であれば、売上代金から仕入代金を支払えば良いので、運転資金の不足は生じませんが、売掛入金の前に、買掛金を支払わなければならない場合は、運転資金の不足が生じてしまいます。
 また、在庫の保管期間が長ければ長いほど、運転資金の不足期間が長くなることになります。
 その不足する運転資金については、企業に留保された自己資金か借入資金で賄う必要が生じます。
 例えば、次のようなケースを考えてみます。
  ・期首に、商品を100で仕入れ、150で販売します。
  ・商品の保管期間が2年とします。
  ・仕入代金の支払い期間(買掛サイト)は、半年とします。
  ・売上代金の回収期間(売掛サイト)は、1年とします。

 項目   1年目   2年目   3年目   4年目   5年目  
 売上    0 150 150 150 150
 売上原価    0 100 100 100 100
 利益    0  50  50  50  50
期末商品   100 100 100 100 100
収入     0     0  150  150  150
支出 △100 △100 △100 △100 △100
年間収支 △100 △100   50   50   50
資金過不足 △100 △200 △150 △100 △50

 1年目は、在庫の保管期間があるため、売上が立たず、買掛金の支払いのみ発生します。
 2年目は、売上が立つものの売掛金は入金されていないため、買掛金2期分の資金不足が生じています。
 3期目より売掛金の入金が生じますので、資金不足は解消に向かいますが、資金不足が完全に解消されるのは6年目ということになります。
 このケースでは、最大200の資金不足が生じますので、この金額については、別の自己資金か銀行借入などで調達する必要があるということです。
 単に利益が取れれば良いという発想ではなく、この運転資金の不足をできるだけ減らすことで、金利負担の軽減を図ることができますし、余裕資金がでれば他に投資できることになります。同じ事業をしていても運転資金を管理している会社とそうでない会社では、自然と企業体力に差が生じることになります。
 また、企業の売上が拡大する時期は、このような原理から、資金不足が生じやすくなります。

売上に関する資金繰り管理
「売上予測」
資金繰り管理は、将来の資金繰りの管理です。したがって、売上高の見通しを立てることからスタートです。結果として資金が不足したり、支払が遅れることは避けなければいけませんので、資金繰り管理上は、確実な売上げを想定することが重要です。
「契約条件」
 現金商売の場合は、日々現金入金がありますが、そうでない場合は契約条件により、資金の回収期間が異なってきます。契約条件を正確に把握し、回収見通しを立てることが大切です。まず、販売管理システムなどを導入し、契約条件を正しく入力できる体制をつくりましょう。
 つぎに、自社の原則的な取引条件を決めておいた方がよいと思います。仕入、外注費、人件費など、業種により資金負担が生ずるタイミングが異なりますので、業態に合わせた取引条件を決めることになります。工事請負業などで、工期中の資金負担が大きい業種は、一部前金とすることも当然の対応かと思います。また、入金日を買掛金の支払日よりも前に設定することも月々の資金繰りを楽にする要因となります。
「早期資金化の検討」
 得意先からの入金は、基本的には契約条件通りにしか行われませんが、以下の方法により、売掛債権を早期に資金化することができます。但し、一定の割引料や手数料負担が生じます。  ・受取手形の割引
 ・売掛債権の譲渡(ファクタリング)
 ・電子債権の譲渡(でんさいネット)
 ファクタリングやでんさいネットに関する情報ついては、インターネットで簡単に調べられます。
「与信管理・延滞管理」
 資金繰り管理の体制を整備して、綿密な資金繰り予測を立てたとしても、得意先が倒産してしまえば、一気に企業の資金繰りは窮します。また、得意先が倒産しても資金繰りに窮しないような債権保全策をとっておくことも大切かと思います。一般的な、管理手法を記載しますので、企業のレベルに応じて可能な体制づくりをお勧めします。
 (契約・与信管理)
 (1) 営業等現業部門からの「新規・継続契約申請」<相手先・取引内容・条件等>
 (2) 管理部門での「与信審査」<HP、与信情報、登記簿、決算書等>
 (3) 経営サイドでの、「与信枠決定」、「取引承認」
 (4) システム部門での「得意先情報」登録<得意先情報、契約情報>

(回収の管理)
 (1) 得意先台帳の作成<販売管理システム・会計システム>
 (2) 回収情報の登録<未入金リストを営業部門へ>
 (3) 延滞債権リストの作成<営業部門へ配布し、延滞理由・回収予定を記載>
 (4) 債権回収会議<管理職会議にて情報共有>
 (5) 得意先対応の意思決定<取締役会等>

(債権保全)
 ● 営業保証金の徴収
 ● 保険・保証制度の活用(中小機構倒産防止共済、取引信用保険、売掛債権保証など)
 ● 債務者からの保証・担保の徴求
 ● 現金取引とする又は取引の停止
 ● 法的手続き

 次回は、「運転資金その2」ということで、「売上原価」「適正在庫」の部分に着目して、企業の資金繰りを考えたいと思います。

 是非、皆様のご意見・ご要望をお聞かせください。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡県福岡市博多区綱場町6-15 川野ビル1F
TEL092-272-0710 FAX092-272-0711
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