人件費の資金繰り管理
人件費には、一般的に以下のような項目があります。
@役員報酬:役員に対する報酬
A給与・賞与:従業員に対する給与・賞与
B法定福利費:社会保険料、労働保険料
C福利厚生費:社員旅行費、健康診断費、従業員に対する慶弔費等
D退職給付費用:従業員の退職給付に係る費用
E役員退職慰労金:役員の退任に際して給付される報酬
@役員報酬〜B法定福利費
1.月々の支給総額予算を設定します。
● 過年度の実績をベースに、役員、正社員、パート・アルバイトの区分に分けて、人員の増減や昇給率を加味して当期の月次予算を決める。
● パート・アルバイトについては、平均時給(日給)に月間稼働時間(日数)合計を乗じて計算する。
● 当期の経営目標等を反映させる(例:賞与支給方針、残業代の5%削減、社員・パート比率の変更)
2.法定福利費予算を立てます。法定福利費の内訳は以下のとおりです。
「健康保険料」:半額会社負担 翌月末納付
「厚生年金保険料」:半額会社負担 翌月末納付
「児童手当拠出金」:全額会社負担 翌月末納付
「労災保険」:全額会社負担 6月1日〜7月10日までに概算保険料及び確定保険料支払
「雇用保険」:一定割合会社負担 同上
それぞれの保険料率は、報酬・給与の額に対する率として、保険加入者の年齢や業種その他の条件に応じて定められています。月次予算や資金繰り計画を立てる段階では、前年度の給与に対する各保険料の比率を使用するのが実務的かと思います。それぞれの納付月に予算額を入れ込みます。
3.給与の天引き等の資金繰り
所得税・住民税、社会保険料の個人負担分については、事業主が本人から徴収し、納付をする必要があります。当然、会社の資金繰りに影響しますので、これを月次の資金繰り計画に反映させます。
「源泉所得税」:各月徴収 原則翌月10日までに納付
「住民税特別徴収」:特別徴収額通知に従い各月徴収 対象月の翌月10日まで
「社会保険料」:当月又は翌月徴収 翌月末までに納付
「雇用保険料」:各月徴収 6月1日〜7月10日までに概算保険料及び確定保険料支払
原則的には、前年の徴収実績や徴収割合に応じて、月次の資金繰り計画に反映させることになります。また、当月内に概ね同じ金額を納付・徴収するため、影響が軽微な場合は、資金繰り計画に含めない実務もあるように思います。
但し、源泉所得税で納期の特例を適用し、源泉所得税を7月と1月の年2回払いとしている会社については、月次の資金繰りとして影響が大きいと思いますので、必ず検討しておくべきかと思います。
C福利厚生費
こちらは、通常の経費予算と同じで、年間の行動計画に従って予算と資金繰りを立てます。なお、福利厚生費は、原則として、従業員の福利厚生のために全てに機会均等に支出する費用です。一部の従業員のみへの支出や従業員以外の者への支出は福利厚生費として認められず、給与・賞与、交際費、寄付金などに認定されるリスクがあります。
D退職給付費用、E役員退職慰労金
1.一時金制度、役員退職慰労金
支給時期が確定又は予想できるものを月次の資金繰り計画に反映させます。また、これに対する源泉所得税があれば、これも月次の資金繰り計画に反映させます。
2.年金制度
企業年金や中退協に入っている場合は、毎月の掛金を月次の資金繰り計画に反映させます。
※損益計画は、退職給付会計基準を採用しているかどうかで会計処理が変わってきますので、ご留意ください。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
|