皆さん,こんにちは。弁護士の堀繁造です。
前回,弁護士費用について概略をご説明いたしましたので,今回は,そのうちの着手金についてご説明いたします。
【着手金とは】
着手金とは,弁護士に事件を依頼する際に支払う費用のことです。着手金は,代理人としての弁護士の活動費用のようなものですので,事件の成功,不成功に関わらず返還されません。
【着手金の基準】
着手金の基準について,以前は,日本弁護士連合会及び各地の弁護士会の報酬規定が定められていたのですが,弁護士法の改正により,平成16年4月に廃止されました。
以後は,依頼者と弁護士との契約により定められることとなったのですが,多くの弁護士は旧報酬規定に近い内容で報酬契約を結んでいるようです。
そこで,参考までに民事訴訟事件における旧報酬規定における着手金の基準を明らかにしますと(消費税別),事件の経済的な利益の額が,
@300万円以下の場合 8%(但し,着手金の最低額は10万円)
A300万円を超え3000万円以下の場合 5%+9万円
B3000万円を超え3億円以下の場合 3%+69万円
C3億円を超える場合 2%+369万円
となっていました。
【具体例】
では,旧報酬規定によると,具体的な着手金の額はいくらになるのでしょうか。
(例1)
・事案:知人に100万円を貸したが期日までに返してくれないので,弁護士に依頼して貸金返還請求訴訟を提起したい。
・着手金額:この場合,事件の経済的な利益の額は,貸金額100万円となります。
そうすると,@の基準に該当し,
100万円×8%=8万円 但し,着手金の最低額は10万円ということで,着手金額は10万円ということになります。
(例2)
・事案:交通事故で夫が死亡したので,加害者に対し1億円の損害賠償請求訴訟を提起したい。
・着手金額:この場合,事件の経済的な利益の額は損害賠償請求額1億円となります。
そうすると,Bの基準に該当し,1億円×3%+69万円=369万円ということで,着手金額は369万円ということになります。
【実際は…】
着手金額を旧報酬規定どおりに定めますと,かなり高額の印象を受けると思いますし,例2によれば,弁護士に依頼して1億円の損害賠償請求を行うことなど一般市民では不可能に近いと思います。
そこで,実際には旧報酬規定よりかなり低い金額で着手金を定めている弁護士が多いと思われます。
着手金額がどの程度の金額になるかは,事件を依頼する弁護士と相談してください。
回答者 弁護士 堀 繁造
|