【初めに】
皆さん,こんにちは。弁護士の堀繁造です。
前回,弁護士費用のうち着手金について概略をご説明いたしました。
前回ご説明しましたのは,事件の経済的利益の額(訴える額)の一定割合が着手金額となるということでしが,事件によっては,事件の経済得的利益を算定するのが困難なものもの少なくありません。
では,そのような事件ではどのようにして着手金額を定めるのか,いくつかの代表的な事件について,旧報酬規定を参考にしてご説明いたします。
【離婚事件】
離婚事件は,事件の経済的利益を算定するのが困難な事件の典型例です。
しかも,事件の内容が複雑で,単に離婚を請求するだけのものから,子の親権を争うもの,財産分与を求めるもの,慰謝料を求めるもの,年金分割を求めるものなど,これらが複雑に絡み合ってきます。
また,離婚には,協議離婚,調停離婚,裁判離婚といくつかの段階を踏んでいくことがあるので,どの時点で弁護士に依頼するかによっても異なってきます。
旧報酬規定によりますと,離婚事件の場合,
(1)交渉事件 20万円〜50万円
(2)調停事件 20万円〜50万円 (1)から引き続き受任する場合はその1/2
(3)訴訟事件 30万円〜60万円 (2)から引き続き受任する場合はその1/2
とされています。
慰謝料や財産分与等を別途請求する場合には,経済的利益に基づいて算定した着手金額を別途加えることになっていますので,かなり高額の着手金となる可能性があります。
しかし,私の感覚でお話しますと,一般的な離婚事件の着手金額は,請求内容にかかわらず,着手金額は30万円〜50万円の範囲で納まっているのではないかと思います。
【破産事件】
破産事件も,事件の経済的利益を算定するのが困難な事件です。
負債総額を基準にすれば莫大な金額となりかねませんし,これから破産しようとする人には準備できる金額に限界があるのが通常です。
旧報酬規定によりますと,破産事件の場合,
(1)事業者の自己破産 50万円以上
(2)非事業者の自己破産 20万円以上
とされています。
一般的には,個人の方の場合の着手金は30万円前後が多いと思います。
ただし,一定の財産を有している等で破産管財事件となる場合には,着手金とは別に予納金が必要となりますので,注意が必要です。
【刑事事件】
刑事事件の場合,弁護士費用を賄えない方には国選弁護制度がありますので,私選で弁護人を選任することはあまりないかもしれません。
旧報酬規定によりますと,私選の刑事事件の場合
(1)起訴前及び起訴後の事案簡明な事件 20万円〜50万円
(2)起訴前及び起訴後の(1)以外の事件 20万円〜50万円の範囲の一定額以上
とされています。非常に分かりにくいと思いますが,一般的には30万円前後が多いように思います。
ただし,無罪を争うような事件や重罪で裁判員裁判の対象となる事件は,担当する弁護士の負担が大きく,事件が長期化する場合が多いので,相当の着手金を請求されることもあるかと思います。
【最後に】
2回にわたって着手金について説明足しましたが,少しは具体的なイメージをつかんでいただけたでしょうか。
結論的には,現在統一した報酬規定はなく,着手金額はケースバイケースと言わざるを得ませんので,依頼する弁護士とよく相談して決めてください。
回答者 弁護士 堀 繁造
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