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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成24年6月号》
離婚事件についてC

【初めに】
   皆さんこんにちは。弁護士の堀繁造です。
 今回は,離婚の裁判について,説明いたします。離婚の裁判全体を説明するのは難しいので,離婚の裁判特有の点について説明したいと思います。

【調停前置主義】
 離婚の裁判を提起するには,その前に調停を行わなければなりません。その趣旨は,家庭内の問題は本来法律になじまないのでまずは話合いによる解決を図るのが妥当ということにあると思います。ただし,相手方が行方不明の場合などで調停に付するのが適当でないと認められるときは,調停に付さないで訴訟を提起することもできます。

【訴えの提起】
 調停が不調に終わると,離婚の裁判を提起することとなります。離婚事件の管轄裁判所は,夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
 調停の場合と異なり,相手方配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に限られないので便利ですが,私が最近経験した事件では,夫が家を出て別居後に夫の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚の裁判を提起したところ,妻側から妻の住所地を管轄する家庭裁判所への移送の申立がなされ,これが認められたということがあります。これは,妻側への配慮と離婚問題が生じた場所の管轄裁判所のほうが事件の審理になじむとの判断があったものと思われます。
 逆に夫婦が同居している場合には,管轄裁判所で悩むことはありませんが,訴状の送達で困ることがあります。最近私が経験したのは,同居の夫婦の離婚事件を妻から受任したところ,夫が裁判を拒否していて,訴状等の書類を受け取らないというものでした。事情を知らない郵便局員が自宅に出向いたところ,妻が自宅にいて,自分が申立てた夫宛の訴状を受け取ってしまったのです。これでは送達の効力が生じませんから,もう一度送達をやり直し,裁判所からは妻に対し訴状を受け取らないよう指示がなされました。

【離婚原因】
 離婚調停の場合は話合いですので,厳密な離婚原因の有無にとらわれることなく離婚協議が可能ですが,離婚の裁判におきましては,裁判上の離婚原因がなければ離婚は認められません。裁判上の離婚原因につきましては,民法770条1項各号に定められております。これを列挙しますと,
@配偶者に不貞行為があったとき(1号)
A配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
B配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)
C配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき(4号)
Dその他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
ということになります。
 この中で,最も多い離婚原因は,「不貞行為」と「婚姻を継続し難い重大な事由」です。
 「不貞行為」は,判例の定義では,「配偶者ある者が,自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とされています。
 難しいのは,「婚姻を継続し難い重大な事由」です。抽象的な原因ですので,これに何が含まれるか明らかでありませんが,一般的には,婚姻関係が破綻していて回復の見込みがないと認められる事由を指すといわれています。具体的には,暴力,性的不能,過度の宗教活動,親族との不和,性的不一致などが挙げられます。ただし,これらの事由があったからといって直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」が有ると認められる訳ではなく,婚姻関係が破綻していて回復の見込みがないと認められる程度でなければなりませんので,注意が必要です。

【訟手訴続】
 離婚の裁判の訴訟手続も通常の民事訴訟手続と大きく異なるものではありません。ただし,人事訴訟法によりいくつかの特例が設けられております。そのうち最も重要なのは,裁判上の自白に関する規定が適用されないことです。その結果,
@相手方が当方の主張する事実を認めても,裁判上の自白が成立しない。
A相手方が裁判に出頭しない場合でも,証拠調べにより離婚原因等を認定しなければならない。
といったこととなります。

【最後に】
 離婚事件は,他の事件に比べると個性が強く複雑で,解決が大変難しい事件です。離婚事件の相談を受けると,子どもたちの将来のことなども考え,何が一番いい解決なのかいつも悩まされます。できればいつまでも夫婦円満でいたいものですね。

回答者 弁護士 堀 繁造
堀法律事務所
弁護士 堀 繁造
福岡市中央区大名2-11-13古河大名ビル4F
TEL092-718-0029 FAX092-714-6881
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