【初めに】
皆さんこんにちは。弁護士の堀繁造です。
今回は,民事訴訟における裁判手続の一般的な流れについて御説明いたします。
XさんがYさんに平成24年3月1日,150万円を返済期限平成24年5月31日の約束で貸していた(借用証書あり)ところ,Bさんが期限を過ぎても返してくれない,という事案を例に説明します。
【相談から訴状の提出】
Xさんは,このことをA弁護士に相談します。A弁護士は,Xさんの相談を聞いて,任意の話合いが難しいと判断し,Xさんに裁判の方針を勧めます。Xさんも裁判を決意してA弁護士に委任し,A弁護士と訴訟の準備に入ります。このとき,A弁護士は,Xさんから,Yさんとの関係,Yさんに150万円を貸した理由,Yさんから返してもらえない理由などの事情を聞き,裁判に提出する証拠として借用証書などを預かります。
A弁護士は,Xさんから聞いた事情や借用証書を基に訴状を作成し,借用証書のコピーを証拠として添付して,地方裁判所(訴額が140万円以上の場合の管轄裁判所は地方裁判所)に提出します。
【裁判所での訴状の受付】
A弁護士が裁判所に訴状を提出すると,訟廷係が訴状を受け付け,訴状の審査をします。このとき事件番号が決まります。こうしてXさん(原告)が提起した裁判が始まります。訴状に問題がなければ,訟廷係は事件を担当裁判部に送り,担当裁判官が決まります。そして,担当裁判官の担当書記官とA弁護士との間で第1回口頭弁論期日の打合せを行い,弁論期日を決めるとYさん(被告)に訴状を送達します。
訴状を受け取ったYさんは,原則として口頭弁論期日の1週間前までに答弁書(訴状に対する回答書)を提出しなければなりません。ただし,第1回口頭弁論期日はYさんの都合を聞かないで決められているため,第1回口頭弁論期日に限っては,Yさんは答弁書さえ裁判所に提出しておけば出頭しなくても特別な不利益を受けない扱いとなっています。訴状を受け取ったYさんは,借りたお金は既に返済しているとして,事件をB弁護士に相談し,委任することとします。
【第1回口頭弁論期日】
第1回口頭弁論期日には,Xさん(原告)の代理人であるA弁護士が出頭して,訴状を陳述します。Yさん(被告)の代理人であるB弁護士も都合がつけば出頭しますが,都合がつかない場合には,予め提出した答弁書を裁判所が陳述擬制(陳述したものとみなす)します。
このとき,B弁護士は,Yさんがお金を借りたこと(これを請求原因事実といいます。)は認めるが,既に全額返した(これを抗弁事実といいます。)と答弁しますので,今後の裁判では,Yさんの抗弁が認められるかどうかが争点となります。
【第2回口頭弁論以降】
先に述べたとおり,裁判の争点はYさんの返済したという抗弁が認められるかどうかで,Yさん側でこれを立証しなければなりません。考えられる立証方法としては,Xさんに返済した際の領収証,Xさんの預金口座に振り込んだのであれば振込金受付書などの証拠書類(これを書証といいます。)を証拠として提出することになりますし,現金で手渡した際にCさんが立ち会っていたということになれば,Cさんを証人として申請する(これを人証といいます。)といったことが考えられます。
書証は,裁判所に原本が提示されることによって,人証は,証人尋問という形で法廷で取り調べられることとなります。また,Xさん,Yさん自身も,当然事情をよく知っていますので,本人尋問という形で取調べを受けることとなります。
【判決】
証拠調べが終了すると,最後にXさんYさんの立場から言い分をまとめた書面(これを準備書面といいます。)を提出し,結審となります(結審の前に和解の話合いがなされることもあります。)。
結審すると,裁判所は大体1〜2カ月程度先に判決の言い渡し期日を定めます。判決言渡し期日には,裁判官が判決を言い渡します。判決では,主文でXさんの請求を認める(認容する)のか,それとも認めない(棄却する)のかを明らかにします。
Xさん,Yさんのいずれが勝訴するのか分かりませんが,敗訴した当事者は不服があれば判決を受け取った日から2週間以内に控訴することとなります。2週間以内に控訴しないと,その判決は確定することとなります。
【最後に】
ごく簡単に書きましたが,大まかな裁判の流れは以上です。第2回口頭弁論以降は事件によって様々な経緯をたどりますが,大体結審までに1年程度かかることが多いようです。裁判手続は結構大変ですので,弁護士に相談することをお勧めします。
回答者 弁護士 堀 繁造
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