【瑕疵担保責任とは?】
なかなか一般生活において「瑕疵担保責任」なんて言葉は使いませんし、なじみのある言葉ではないと思います。
ただ、法律を勉強したことがある方、仕事上、契約書に関わる方であれば、必ず聞いたことがあるのが「瑕疵担保責任」です。
この「瑕疵担保責任」の「瑕疵」とは、誤解をおそれずに、平たく言えば「目的物を引き渡した際に、本来有すべき性能がないなどの不具合」のことであり、「瑕疵担保責任」とは、瑕疵がある場合の責任ということになります。
たとえば、中古車を購入したらエンジンが壊れていた場合、中古建物を購入したところ、床下がシロアリだらけだった場合、建物を建設してもらったら欠陥住宅だったという場合に「瑕疵がある」といいます。
瑕疵担保責任には、売買契約の場合と、請負契約の場合で、民法の規程が異なるので、区別して考えたほうがいいと思われます。
先ほどの例ですと、中古車や中古建物の場合は、売買ですので、売買契約における瑕疵担保責任の問題となり、建物を建設するという請負契約の場合には、請負契約における瑕疵担保責任の問題となります。
ソフトウェア開発契約は、請負契約に近いので、民法上、瑕疵があることを理由に、@修補請求、A損害賠償請求、B解除・代金返還請求を行うことができるとされます。
【どのような不具合がソフトウェア契約における瑕疵になるのか】
(1)次のうち、どのようなものが瑕疵とされるのでしょうか。
@ソフトウェアに簡単に修正できるバグがあった
A特定のソフトと同時に操作することができない不具合が判明した
Bシステムに欠陥があり、セキュリティホールとなりうることが判明した
C発注条件どおりに作成されているが、その発注内容が誤っており不具合が生じた
(2)瑕疵の基準
私見では、瑕疵に該当するかは、契約で予定された品質・性能を欠くかという点を基準として考えるべきです(これに対し、一般的な水準をもって判断すべきという考え方もあります)。
この考え方によれば、@のバグは「瑕疵」になりえそうです。ただし、バグの程度を考慮しなければならないことは後述します。
Aの場合は、そもそもの発注内容によるところが大きいです。たとえば、特定のソフトと同時に操作することが前提として考えられているソフトであれば、瑕疵となりえます(動作環境として指摘をしていたかどうか)。一方で、想定をしていないような特殊なソフトとの関係で動作しないのであれば、瑕疵とは評価できないと思われます。動作環境について、どのように定義をしていたのか、重要となりそうです。
Bの場合は、当事者間で合意をした内容に定めがなくとも、やはり、「瑕疵」となる場合があると思われます。もっとも、その「瑕疵」は、@のバグの例と同じく、程度を考慮すべきと考えます。
Cについては、注文者の注文通りのシステムを提供している以上、瑕疵とは言えないものと考えます。民法にも、注文者の指図による場合には、瑕疵担保責任を制限する条項があります。ただし、一般的には、システム開発者のほうがシステムに詳しいのですから、トラブル防止の観点から、注文者の指図に問題があるとわかっているような場合には、受注者の責任も生じる可能性があります。
【次回は】
今回は、紙面の関係でここまでとし、続きは次回以降とします。
次回は、今回の続きで「瑕疵とバグ、不具合の程度」、「瑕疵担保責任に関する損害」、「瑕疵担保契約条項の例」を検討したいと思います。
回答者 弁護士 小川 剛
|