1 訴訟費用に関する和解条項について
前回までに民事裁判における和解の説明をしました。今回は、和解に関連して、訴訟費用について説明をしたいと思います。
裁判上の和解条項には「訴訟費用は各自の負担とする」という記載がなされるのが一般的です。
2 訴訟費用とは
民事裁判で被告となった場合、訴状が届くことになります。この訴状には、「訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求める」との記載があります。
そして、判決には、「訴訟費用は被告の負担とする」「訴訟費用はこれを5分し,その4を被告の負担としその1を原告の負担とする。」といった記載がなされます。
民事訴訟法61条には、「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。」と定められています。
この訴訟費用は、よく弁護士費用のことと誤解をされます。あるいは、訴状には「訴訟物の価額」が記載され、その金額と誤解がなされることが少なくありません。
まず、弁護士費用は、裁判所が決定する訴訟費用には含まれません。
次に、この「訴訟物の価額」とは、不動産の請求であればその評価に基づく金額、金銭の請求であればその金額となる等、細かく定められています。この訴訟物の価額によって、裁判所に収める印紙代が定められることになるのです。
では、訴訟費用には何が含まれるかというと、この裁判所に収めた印紙代が代表的なものです。
その他に、証人の日当なども含まれますが、証人は証言をする際に、日当を放棄しているような例も多いかと思います。
また、証拠や準備書面を提出した数に応じて、一定の加算がなされますが、それも数千円以内となることがほとんどです。
このように、訴訟費用は、弁護士費用を含まないということもあり、思われているほど、高額なものとはなりません。
3 訴訟費用の回収の手続き
「訴訟費用は被告の負担とする」という判決を得ても、直ちに訴訟費用の支払いを求めることができるわけではありません。裁判が終了した後に、訴訟費用について裁判所に確定してもらう必要があります。
この額の確定によって、請求することができるのです。ただし、この請求まで行う例は、かなり少ないのが実例ではないでしょうか。
4 和解の場合の訴訟費用の扱い
訴訟費用は各自の負担とする、とした場合には、裁判の終了後に訴訟費用の確定を裁判所に求めることができません。これにより、訴訟費用は、それまで手出しをした当事者(多くは原告)が負担することになるのです。
なお、和解においても、訴訟費用は被告の負担とする、と定めることは可能ですので、その場合には、訴訟費用を確定する手続きをとることになりますが、和解をする場合には、もはや、その費用も考慮して額を定めればいいのであって、そこまでの手続きをする例は少ないと思います。
5 まとめ
今回は訴訟費用という、あまりなじみの無いテーマを説明しました。和解条項に記載がなされながら、よく意味が分からない、という方もいると思います。そのような場合の参考になれば幸いです。
回答者 弁護士 小川 剛
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