1 差し押さえをするには
前回、強制執行を意識した和解の説明をしました。
今回は、債権回収における強制執行、差し押さえの概要について、説明をしたいと思います。
2 すぐに差し押さえたい
法律相談で「相手が売掛金を支払ってくれないので、どうしたらいいか」、「差し押さえというのはどうやったら出来ますか?」「仮差押はどういうものですか?」と質問を受けることがあります。
まず、差押えとは、確定判決などの「債務名義」と言われる文書をもとに銀行預金を押さえるといった手続きとなります。債務名義さえあれば、裁判所に収める実費は数万円です。
これに対し、仮差押は全く異なる手続きとご理解ください。
仮差押は、まだ判決は取っていないけれど、裁判をしている間に相手方のお金が無くなってしまっては意味が無いので、今のうちに財産が散逸しないように抑えるという手続きです。
3 仮差押の概要
仮差押をするには、判決等が得られていない状態で相手方の預金等を拘束することになりますから、差押を受ける側に配慮をする必要があります。
このため、仮差押をする場合には、担保金の準備を求められることが一般的です。担保金の額は、概ね仮差押えを希望する額の2割から4割(平均して3割程度でしょうか)を準備する必要があります。
仮に1000万円の債権について仮差押をする場合には、300万円程は納付しなければなりません。この300万円は手続きに問題がなければ、いずれ返還されるものです。
こうして300万円を用意して仮差押の申立をしたとします。それでも、相手方の預金が十分でなければ、仮差押が効力を発揮できない場合もあります。
また、仮差押がうまくいって相手の1000万円の預金を拘束できたとしても、その1000万円がすぐに自分のものとなるわけではありません。
この1000万円は、裁判で勝ったときの強制執行の際の執行対象財産とできるだけであって、結局、1000万円が支払われるのは、裁判をした後、ということになります。
もちろん、支払いをちゃんとしないような相手方ですので、裁判が終了するまで資力が維持されるか分かりません。仮に、仮差押によって、資金繰りに支障が生じ、破産でもされた場合には、仮差押をした意味はなくなることになります(破産手続きにおいて、配当金を得られる見込みはありますが、その金額は限られるでしょう)。
5 まとめ
このように、仮差押は、債権回収において、様々なリスクがあります。ただ、効果を発揮する場面もありますので、次回は、もう少し差押と仮差押の活用について説明をしたいと思います。
回答者 弁護士 小川 剛
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