1 はじめに
このたびの熊本を中心とする大震災の被害者の方々にはお見舞いを申し上げます。私も熊本出身ですので、友人等がいまだ避難生活を余儀なくされております。1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
2 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン
震災では、多くの家屋が損壊しました。損壊した家屋は古い家屋が多いのかもしれませんが、中には、住宅ローンを支払っている最中だったが、もう自宅に住むのは困難だ、という方もいらっしゃるかと思います。
この場合、住宅ローンの扱いはどのようになるのでしょうか。
5年前の東北地方での震災でもこの問題は議論され、昨年に、一般社団法人全国銀行協会が「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」をまとめ、本年4月からの扱いとなっています。今回の震災では、このガイドラインによって、住宅ローンについて、「任意整理」という形式で、弁済額を軽減できるかもしれません。
この制度は、今回が初めての運用となりますので、不透明な点も多いのですが、全銀協のホームページに掲載されてるパンフレットからは、「財産の一部を残しながら、弁済をする」「信用情報には載らない」といった記載がなされています。
同ホームページを詳しく見てみると、手続きとしては、住宅ローンの弁済が困難になった方は、罹災証明書などを住宅ローンの金融機関に持参し、手続きをしたいことを申し込むようです。そうすると、金融機関から弁護士会等に要請され、弁護士会から選任された弁護士が金融機関と被災者の間で、合理的な弁済計画を立てる、ということになるようです。
実際に運用がスタートしたわけではありませんので、私見となりますが、この合理的な弁済計画とは、金融機関にとっては、被災者が破産するよりは利益があることを前提とするものですので、住宅は半壊したが、土地は残った、というような場合には、土地の分の住宅ローンは支払うことになるのではないかと思われます。ただ、それでも、建物の住宅ローンが減免されるとしたら、再度、建物の分だけ住宅ローンが組めるかもしれません。きっと、被災者の生活再建の一助になれるはずです。
なお、このガイドラインは、住宅ローンに限らず災害により収入が激減した場合や、事業者の事業性ローンについても対象としているようです。ただ、これまでも滞納があった等の被害者は対象外となるようですので(どの程度の滞納が許容されるのかは不明です)、その点がネックになる場合もありそうです。
3 現在できることは・・
今後の手続きを考慮すると、最初に必要となるのは罹災証明です。
罹災証明の取得のためには、被害が明らかになる必要がありますので、現地の写真、被害写真を撮るということが現在できることになると思います。
今後、被災者に対する地震保険金の支払い、行政からの見舞金の支払い等もなされるのではないかと思いますが、その際にも、被災の程度が明らかであることが重要となりますので、この点からも、被災現場の片付けの前に、数枚だけでも写真を残していただけると、後々、助かる場面があるかもしれません。
改めて、被災者の方のご健康、今後の生活再建が速やかになされることを祈念いたします。
回答者 弁護士 小川 剛
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