遺留分の問題です。
1 遺留分とは
これまでも遺留分対策として情報を提供してきましたが、今回と次回は、遺留分を請求する側からの検討を行いたいと思います。
遺留分とは、法定相続人の生活の保護、あるいは相続人間の平等を目的とし、最低限の遺産の確保を実現するものです。遺留分が認められるのは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外となります。
本件の場合には、本来、兄とAは2分の1ずつの法定相続分を有しており、遺留分はその2分の1として4分の1がAに認められる権利となります。
この4分の1は、Aにとっては少なく感じられるかもしれませんし、事情を知らない他人からは「それぐらい」と思われるかもしれませんが、おそらく、兄にとっては「4分の1も取られるのか」と感じるはずです。
遺留分に関する紛争は、長期間の人間関係を背景とした感情的な面も少なからずあり、紛争も長期化することが少なくありません。
2 遺留分の請求の通知と文例
Aは遺留分権利者として、兄に対し、大前提として遺留分減殺請求の通知を発する必要があります。この通知を行わなければ、何も始まりません。極めて重要な通知と考えてください。
遺留分の通知には、法律上、期間の制限があります。民法1042条には「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時より10年を経過したときも同様である。」と定められていますので、遺言書の内容を知ったとき、あるいは父の死を知ったときから1年以内に、兄に対し、「遺留分減殺請求」の通知を発しなければなりません。いつ知ったか、というのは固定するのが難しいので、できる限り、被相続人の死亡から1年以内にこの手続きを行うべきです。
繰り返しになりますが、この通知がなければ、手続きは進まないことになります。
この請求がなされたか否かは重要ですので、内容証明郵便で発送すべきです。内容証明郵便は文字数など所定の書式で記載する必要がありますし、差出ができるのは特定の郵便局のみとなります(電子内容証明郵便による方法もあります)。簡単な通知の例を記載します。
<遺留分減殺請求通知の文例>
平成29年10月1日
〒***−****
福岡市*******
B 様
遺留分減殺請求通知書
福岡市**********
A
前略
私は、亡父○○○○氏(以下「被相続人」という。)の法定相続人です。
被相続人は、平成○年○月○日付自筆証書遺言により貴殿に対して全ての財産を相続させる旨の遺言をし、平成○年○月○日に亡くなりました。
これにより、私の遺留分が侵害されておりますので、本書面により、遺留分の減殺を請求致します。
草々
今回は、遺留分の請求通知までの段階を説明しました。今後、遺留分に関する具体的な計算等を説明したいと思います。
回答者 弁護士 小川 剛
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