A 法定相続分と不動産価値の関係で結論が大きく異なります。以下、簡単に説明します。
1 まずは遺産総額と法定相続分を確認する。
今回の相談者の場合には、法定相続分は3分の1ずつとなります。
そして、遺言書により土地、建物の全てを相続させる、という遺言が遺されています。この遺言が有効なものであることを前提とすると、まず、兄Bは不動産を取得することになります。
ここでは、仮にこの不動産価格が5000万円だとします。
(1)不動産以外の財産が4000万円の場合
この場合、遺産総額は不動産5000万円+その他(預貯金、株式)4000万円で合計9000万円となります。
法定相続分は各3分の1ですから、遺言書が無い場合には各3000万円を取得することになります。
ところが、兄Bはすでに5000万円分の遺産を得ていますので、法定相続分を超過しています。
そこで、預貯金等についてはAとCで分配するのが相当です。特段の考慮要素がなければAとCが各2000万円を取得するということになるでしょう。
(2)不動産以外の財産が1億3000万円の場合
この場合、遺産総額は不動産5000万円+預貯金等1億3000万円で合計1億8000万円となります。
前述のとおり、この場合の法定相続分は6000万円です。
Bが受領した遺産の評価が5000万円ですので、法定相続分に不足することになります。
そこで、この場合には、3人の法定相続分にあわせるには、AとCが預貯金等から6000万円、Bが1000万円を受領することが平等ということになります。
2 不動産評価が争点に 解決方法を考え直す
上記(1)の場合であれば、不動産評価の問題にはなりにくいでしょうが、(2)の場合には、不動産評価によって、Bが受領する現金の額が大きく異なることになるので、不動産評価について争いが生じることが予想されます。AやCは兄の不動産は7000万円の価値がある、Bは4000万円しか価値が無い、と主張することが想定されます。
不動産評価が争点になる裁判は多く、極めて難しい問題となります。不動産評価が争点となる場合には、双方があらかじめ鑑定をしますが、鑑定評価も一様ではなく、大きな差が生じることが珍しくありません。
もっとも、Bの立場としては、「7000万円というのであれば、不動産をAかCが取得し、自分は預貯金をもらいたい」ということもありえますので、遺言書にかかわらず、不動産をAかCが取得し、その評価を高い水準とするという解決方法も考えられることになります。
このように、預貯金の帰属とあわせ、柔軟に解決が出来れば、それは望ましいのですが、このような解決の場合には、弁護士、裁判所での調停等でなければ実現は難しいかもしれません。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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