A 一般社団法人による相続スキームの概要
1 一般社団法人とは
一般社団法人というと、立派な組織なように思われるかもしれませんが、設立は極めて簡単です。
そして、立派な組織のイメージとして、非営利の団体だ、という点がそう思われているのかもしれません。もっとも、非営利法人であっても、普通の会社と同じく、収益事業を営むことが出来ます。よく分からないかもしれませんが、収益事業を行い、非営利というのが、一般社団法人なのです。
この非営利という意味は、儲かっても出資者に分配されない、解散しても財産が戻らないということです。
なぜ、このような法人が相続対策に向いているのでしょうか?
2 持分がないから相続税が発生しない?
これまでに説明がなされていたのは、一度、一般社団法人に財産を移転すると、その後は持分がないので、相続税が発生しなくなる。相続を受ける予定の方は、その法人の理事になって、収益を報酬、賃金で受領し続ける、ということになります。言葉は悪いですが、「永遠に相続税が発生しない」ような説明すら聞くことがありました。
もっとも、この課税逃れ?については、新聞報道によれば、課税側の対策もなされるように伝えられています(私は税務に詳しくないので、説明できません)。
3 持分無しに不安な点はないのか?
私は、このスキームを聞いて、直ちに危ういと思いました。それは課税の面だけではありません。例えば、子が一人、その子が一人、と何代も相続に揉め事がなければいいのですが、子が3人いるときに、その社団法人の支配権を誰が握るのでしょうか?どうやって決めるのでしょうか?
仮に兄弟で平等に分けよう、という話になったときに、非営利では株式のような持分を分けるということも出来ません。二人一緒に報酬をもらい続けることが基本です。
あるいは、当初は長男を後継者として社団法人の理事にしていましたが、その後に二男を後継者としたいという場合に、あらかじめ長男の意向に沿う理事で人事を固めていた場合、二男を後継者とすることは簡単ではありません。
このように、持分が無い、ということはそれなりのリスクがあるのです。新たなスキームが登場した場合には、十分な検討が必要です。もちろん、リスクを十分に理解された上で、そのようなスキームを使われるのであれば、問題はないのですが。
余談ですが、個人的には、こつこつ暦年贈与を続けていただくのが一番の相続税対策だと思います。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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